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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第5章 Big blue lilyturf



 ローズは咳を繰り返し、咳払いをした。
 胸の痛みは日に日に長引くようになっていた。その上咳も出て、体のだるさも増えてしまった。明らかに体調不良だ。

 買い物袋を抱え、ローズは我が家へ歩いている。
 本当はもう少し勤務する予定だったが、あまりにもローズの体調が思わしくないため、早めに上がらせてもらったのだ。

 リヴァイはきっとびっくりするだろう。
 それと同時に、体調不良のことを話さなくてはならない。あのリヴァイのことだ。しばらくは「養生だ」とか言って、家から出させてもらえないかも。


「ただいま〜」


 この不調の原因はわかっている。だが、それを素直にリヴァイに話せるか、と聞かれれば答えは「いいえ」だ。
 信じてもらえるとは思えないし、仮に信じてもらったとして、リヴァイの反応は目に見えていた。


「ローズ?」


 丁寧に掃除をしていたらしいリヴァイは、帰ってきたローズを見て驚いたように目を見開いた。
 そしてすぐに険しい顔つきになる。


「何かあったのか」

「うん、まぁ、ちょっと体調が悪くて」


 誤魔化すように笑みを浮かべる。急いでリヴァイに背を向けて、ローズはダイニングテーブルの上に買い物袋を置いた。


「俺の夏風邪がうつっちまったか?」


 リヴァイが掃除の手を止めて、ローズの顔を覗き込む。
 その目には罪悪感と心配の色があった。


「そんなことはないと思うけど……寝てたらすぐに治るわ」

「寝てるだけじゃダメなんだろ? 夕飯は俺が作る。部屋にいろ」

「え、でも……」

「今度は俺が看病してやるよ」


 なぜかウキウキとした声色のリヴァイにローズは苦笑する。
 まさかそっくりそのまま言葉を返されるとは思ってもいなかった。


「そこまで言うなら……お願いね」


 大人しく従っていた方が良さそうだ。

 ローズは自分の部屋へ向かおうとした。
 その時だった。

 不意に心臓が激しい痛みに襲われた。
 気づくとローズは足元からその場に崩れ落ち、意識を失っていた。



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