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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第5章 Big blue lilyturf



 胸に痛みを覚えたのはつい最近のことだった。

 ローズはいつも通りの仕事をこなしながら、胸の辺りをさすった。
 テーブルの上を拭き、今夜の夕食を考える。昨日誇らしげにリヴァイが肉を手に入れていたから、それを使うのもいいかもしれない。


「テーブルの準備はできたか?」

「はい! できました」


 店主からの呼びかけに答え、グッと背筋を伸ばす。
 心臓が気味の悪い痛み方をした。


「大丈夫か?」


 顔をしかめ、うずくまりそうになるのを堪えていると、心配そうに店主がローズに近づいた。
 慌てて顔を上げて、笑う。


「はい、大丈夫です。すみません」


 その胸の痛みはほんの数秒だった。
 気のせいだ、と割り切るには長い時間。一つの可能性がローズの頭の中にはあった。


(……母さんも、こんな感じだったんだろうか)


 自分の年齢と、母の死に際を思い出し、予感は静かに確信へと姿を変えていく。


(もう、そんな時期)


 ため息を吐き出す。
 こうなってしまっては止めることはできない。
 花が美しく咲き、そして枯れ、散っていくように。
 これは逃れようのない事柄だった。


「じゃあ、そろそろ開店するぞ」

「はい!」


 だから悩んでいても仕方がない。


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