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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第4章 Petunia



 ローズが隣に並び、愛おしそうに紙を撫でる。


「もともと小さな村で、あたしたち家族は迫害を受けていたわ。だから母が死んで、あたしは村を追い出された。そしたら人攫いに遭って地下街に連れてこられた。あとは、あなたも知っている通り」

「なんで迫害を? この花は、ローズの母さんから生えているように見えた」


 踏み込みすぎだろうか。だが、どうしても知りたかった。
 ローズは黙ったまま何も言わない。言うべきかどうか迷っているようだった。


「それは……まだ、秘密」


 あ、と間の抜けた声を出したリヴァイに、ローズは笑う。
 この話はこれでおしまい、というようにリヴァイの手から紙を奪ってしまった。


「もう少し、先になったら教えてあげる。もう夕食はできたから」


 軽い動きでローズは部屋から出て行こうとする。ドアノブに手をかけて、思い出したように振り返った。


「ペチュニアの花言葉はわかったかしら?」


 その言葉でここに来た目的を思い出し、慌ててページをめくる。
 ローズも最近同じページを開いたのか、それは案外簡単に見つかった。


「“あなたといると、心が安らぐ”」


 声に出して呼んで、ローズを見た。
 初めて聞く花の、初めて知る花言葉。しかしそれはすんなりとリヴァイの心に入ってきた。


「俺も、ローズがいると穏やかな気分になる」


 リヴァイの突然の言葉にローズは目を大きく見開いた。


「さっき目が覚めたとき、ローズがどこにもいなくて焦った。俺を置いて、どこかに行ったんじゃないかって思うと……怖かった」


 本当は孤独でいたかった。その方が、失った時のショックを味わう必要がないから。だから、唐突に現れた同居人とは距離を置いておこうと思っていた。
 でも、それはできなかった。


「いつの間にか、ローズがいなきゃダメになってたんだ」


 今日の自分はとてもおかしい。
 こんなこと言うつもりなんてなかった。子供っぽい言葉ばかり口から出てくる。


「だから、ローズ」


 きっとこれは熱のせいだ。


「俺のそばにいてくれ」



 
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