第4章 Petunia
何度か深呼吸を繰り返し、リヴァイはローズの後を追いかけた。
部屋に入るとローズはすでにキッチンに立っていて、なにやら忙しそうに動いている。その姿を目で追い、リヴァイは椅子に座った。
「リヴァイ、そのお花を花瓶に活けてくれない? できる?」
「あぁ。わかった」
ただ座っているだけでは手持ち無沙汰だったリヴァイは、言われた通りにテーブルの上に寝かされた花束を手に取った。ローズが用意していた花瓶に水を入れ、花を包んでいた紙をはがす。
「これはなんの花だ?」
それはいくらか小ぶりな花で、赤やピンク、白といった色とりどりの花弁だ。
試しにすん、と鼻を鳴らすと、強く甘い香りが届く。
いつもローズが家に飾っている花より強い香りだ。
「それはペチュニア。いい香りでしょ?」
「あぁ」
「夕方から夜にかけて強く香るの。リヴァイのいい気分転換になればと思って」
「……あぁ。ありがとう」
もう一度香りを嗅いでから、リヴァイは花瓶にペチュニアを活け始めた。
ローズのように美しい活け方など知らないため、雑になってしまう。だがローズならどんなものでも「綺麗ね」と笑ってくれるのだろう。
ゆらゆらと揺れる髪を眺め、鳴る腹をさする。
「この花に花言葉はあるのか?」
久しぶりに長く寝ていたせいか、体の至る所が固まっている。
裸足の両足を擦り合わせ、背もたれに背を預けた。
リヴァイの問いかけに、エプロンで手を拭いたローズはゆるく振り返った。
「あるよ」
ローズは優しく笑っていた。その微笑みは、リヴァイに簡単に答えを渡す気はないときのものだ。
リヴァイは唇を尖らせる。
「夕食作ってる間に調べてみて。図鑑を持ってくるから」
「じゃあ自分で持ってくる」
「そう? わかった」
すとんっと椅子からおりて、ローズの部屋へと向かう。
目当ての図鑑は机の上に置いてあってすぐに見つかった。持ち上げて、本の下に1枚の紙があることに気づいた。
なんとなくその紙を手にして、目を落とす。