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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第4章 Petunia



 何度か深呼吸を繰り返し、リヴァイはローズの後を追いかけた。
 部屋に入るとローズはすでにキッチンに立っていて、なにやら忙しそうに動いている。その姿を目で追い、リヴァイは椅子に座った。


「リヴァイ、そのお花を花瓶に活けてくれない? できる?」

「あぁ。わかった」


 ただ座っているだけでは手持ち無沙汰だったリヴァイは、言われた通りにテーブルの上に寝かされた花束を手に取った。ローズが用意していた花瓶に水を入れ、花を包んでいた紙をはがす。


「これはなんの花だ?」


 それはいくらか小ぶりな花で、赤やピンク、白といった色とりどりの花弁だ。
 試しにすん、と鼻を鳴らすと、強く甘い香りが届く。
 いつもローズが家に飾っている花より強い香りだ。


「それはペチュニア。いい香りでしょ?」

「あぁ」

「夕方から夜にかけて強く香るの。リヴァイのいい気分転換になればと思って」

「……あぁ。ありがとう」


 もう一度香りを嗅いでから、リヴァイは花瓶にペチュニアを活け始めた。
 ローズのように美しい活け方など知らないため、雑になってしまう。だがローズならどんなものでも「綺麗ね」と笑ってくれるのだろう。
 ゆらゆらと揺れる髪を眺め、鳴る腹をさする。


「この花に花言葉はあるのか?」


 久しぶりに長く寝ていたせいか、体の至る所が固まっている。
 裸足の両足を擦り合わせ、背もたれに背を預けた。
 リヴァイの問いかけに、エプロンで手を拭いたローズはゆるく振り返った。


「あるよ」


 ローズは優しく笑っていた。その微笑みは、リヴァイに簡単に答えを渡す気はないときのものだ。
 リヴァイは唇を尖らせる。


「夕食作ってる間に調べてみて。図鑑を持ってくるから」

「じゃあ自分で持ってくる」

「そう? わかった」


 すとんっと椅子からおりて、ローズの部屋へと向かう。
 目当ての図鑑は机の上に置いてあってすぐに見つかった。持ち上げて、本の下に1枚の紙があることに気づいた。

 なんとなくその紙を手にして、目を落とす。
 

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