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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第3章 Sun flower



「いいぞぉ、リヴァイ!」

「ったくお熱いねぇ〜」

「そのまま押し倒してやれ!」

「うるせぇ!」


 なぜかリヴァイに賞賛の嵐。一方のリヴァイはギッと他の客を睨んでいた。
 一体何が彼らの心に響いたのかはわからないが、どうやらローズはこの店を追い出されることはなさそうだ。

 耳を少し赤くしたリヴァイは鼻を鳴らし、改めてローズに絡んできた男を見下ろした。リヴァイに蹴られ肋骨を折ったのか、男は呼吸をする度に脂汗を滲ませている。顔もパンパンに腫れていて痛々しい。


「リヴァイ」


 これ以上リヴァイが男を殴らないように、ローズは服の裾を掴む。
 

「受け流せなかったあたしも悪いの。だからあんまり……」

「いや。これは別問題だ」


 すぐに戻る。
 身も凍るような低い声だった。リヴァイは男の襟首を掴み、乱暴に引っ張って店の外に連れ出した。


「ま、ローズが悩むことじゃねぇよ」


 ぽん、と店主の手が肩に乗った。
 見上げると、彼はうんうんと何かに感心したように頷いている。


「本当、愛されてるな。リヴァイに」

「……愛さ、あ、あたしが!?」

「嬢ちゃん以外に誰がいんだよ」

「そうそう。あの馬鹿男蹴っ飛ばす時の顔見たか? 怖すぎてちびるとこだったぜ」

「挙句のはてに“ローズに指一本でも触れたら豚の餌にする”宣言。こんなん愛されてる以外になんて言うんだ」


 素っ頓狂な声を上げるローズに、周りの客も口を挟む。
 どうやら満場一致でローズはリヴァイに愛されているということがわかった。

 自覚すると、ぽぽ、と顔が赤くなっていくのがわかる。
 ただの居候くらいのポジションだと思っていたのに、まさかここまで愛されていたなんて。

 だらしなく頬が緩んだ。


「ローズ」


 ちょうどその時、出て行った時と変わらない姿のリヴァイが戻ってきた。
 男はいない。どうなったか気になったが、聞かないほうがいいと思った。


「帰るぞ。腹が減った」


 グゥ、と呑気に腹を鳴かせるその姿は、さっきまでの鬼気迫るものとは程遠い。ローズは笑って頷いた。


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