第3章 Sun flower
「いいぞぉ、リヴァイ!」
「ったくお熱いねぇ〜」
「そのまま押し倒してやれ!」
「うるせぇ!」
なぜかリヴァイに賞賛の嵐。一方のリヴァイはギッと他の客を睨んでいた。
一体何が彼らの心に響いたのかはわからないが、どうやらローズはこの店を追い出されることはなさそうだ。
耳を少し赤くしたリヴァイは鼻を鳴らし、改めてローズに絡んできた男を見下ろした。リヴァイに蹴られ肋骨を折ったのか、男は呼吸をする度に脂汗を滲ませている。顔もパンパンに腫れていて痛々しい。
「リヴァイ」
これ以上リヴァイが男を殴らないように、ローズは服の裾を掴む。
「受け流せなかったあたしも悪いの。だからあんまり……」
「いや。これは別問題だ」
すぐに戻る。
身も凍るような低い声だった。リヴァイは男の襟首を掴み、乱暴に引っ張って店の外に連れ出した。
「ま、ローズが悩むことじゃねぇよ」
ぽん、と店主の手が肩に乗った。
見上げると、彼はうんうんと何かに感心したように頷いている。
「本当、愛されてるな。リヴァイに」
「……愛さ、あ、あたしが!?」
「嬢ちゃん以外に誰がいんだよ」
「そうそう。あの馬鹿男蹴っ飛ばす時の顔見たか? 怖すぎてちびるとこだったぜ」
「挙句のはてに“ローズに指一本でも触れたら豚の餌にする”宣言。こんなん愛されてる以外になんて言うんだ」
素っ頓狂な声を上げるローズに、周りの客も口を挟む。
どうやら満場一致でローズはリヴァイに愛されているということがわかった。
自覚すると、ぽぽ、と顔が赤くなっていくのがわかる。
ただの居候くらいのポジションだと思っていたのに、まさかここまで愛されていたなんて。
だらしなく頬が緩んだ。
「ローズ」
ちょうどその時、出て行った時と変わらない姿のリヴァイが戻ってきた。
男はいない。どうなったか気になったが、聞かないほうがいいと思った。
「帰るぞ。腹が減った」
グゥ、と呑気に腹を鳴かせるその姿は、さっきまでの鬼気迫るものとは程遠い。ローズは笑って頷いた。