第3章 Sun flower
「おはようございます!」
挨拶は元気よく。
ローズはエプロンを身につけて、店に来るまでに買ってきた花束をテーブルに広げた。新聞紙に包まれたそれは黄色が美しいひまわり。
「お、綺麗だな」
グラスを磨いていた店主が顔を覗かせて笑う。
花瓶に水を注ぎ、見た目を考えながら活けていく。草臥れた酒場が瞬く間に華やかになった。
ひまわりの花言葉。それを知っているのはおそらくローズだけ。
誰に聞かれてもローズは教えることはなかった。ただ優しく微笑むだけだった。
「……密かな愛」
何度も読み込まれたあとのある図鑑をめくる。
あの日、酒場で見たものと同じ花が図鑑には載っていた。絵の輪郭を指先でなぞると、彼女の笑顔が瞼の裏に浮かんだ。
「なんだ、気づかれてたのか」
あの時はこの感情に意味をつけることを恐れていたからわからなかった。だが、きっとあの頃からリヴァイは彼女を──