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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第3章 Sun flower



「な、なんでっ!?」


 あまりの驚きに、ローズは口に運ぼうとしたスプーンを落とした。
 べちゃ、と音を立ててシチューがテーブルに広がる。それを見て、リヴァイは露骨に嫌そうな顔をした。


「これは後で綺麗にしとくから。で、なんで!? あたし、働きたいの!」

「絶対にダメだ」


 頑なに首を縦に振らないリヴァイ。
 ローズはむぅ、と頬を膨らませた。


「せめて理由くらい教えてくれたっていいじゃない」


 変な色をしたじゃがいもにスプーンを突き刺す。(多少変な色でも煮詰めれば大体は食べることができた)
 頬杖をついてとんがった声を出せば、リヴァイは大きなため息をついた。まるで駄々っ子を相手にしているような反応だ。


「いいか。まずお前は地下街での暮らしに慣れてない」

「慣れてないって、もう3ヶ月も経ったのよ?」

「たった3ヶ月だ。じゃあ聞くが、変な野郎に追いかけられてお前は逃げ切ることができるのか? 頼っていい連中と頼っちゃいけねぇ連中の見分けがつくのか?」

「んぐぐ……それは……」


 リヴァイの言葉を強く否定できない自分が悔しかった。
 苦し紛れに視線を逸らす。頭の中で言い訳が回るが、どれも口にはできなかった。負けるとわかったからだ。


「反対に、どうしてそこまで働きたいんだ? 必要最低限の金ならあるだろ」


 そう。金はあるのだ。飢え死にしないくらいの金なら。

 至極まともなリヴァイの疑問に、ローズは一瞬悩んだ。
 素直に話せば働く許可をくれるだろうか? いや、どちらにせよローズは隠し事は苦手な方だった。

 スプーンを置き、瞼を伏せる。
 

「だって、あたし、あなたに何も返せてないんだもの」


 言って、やっぱり言わなきゃよかったと思った。
 言葉にしたせいで自分の惨めさが顔を出したから。


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