第3章 Sun flower
「おぉ、リヴァイのとこの姉ちゃんじゃねぇか」
店主はローズを見て人の良さそうな笑顔を浮かべた。
あのリヴァイと暮らしているおかげか、ローズの名はずいぶん知られているようだ。
「どうかしたか?」
「何かお困りなんですか?」
ローズが言うと、彼は困ったような恥ずかしそうな顔で鼻の頭を触る。
視線が泳いで諦めと共にため息が吐き出された。
「実はな、さっきの奴が辞めたせいで働き手が俺しかいなくなっちまったんだよ。流石に酒場を一人では切り盛りできねぇしなぁ。また募集かけんのも面倒でな」
要は働き手を募集しているということか。
ローズはパッと顔を輝かせた。ここで話を終わらせるわけにはいかない。
「あの、あたし、今仕事を探してるんです! ここで働いてもいいですか?」
店主はぽかんと口を開けた。ローズの言うことを理解するのにしばらく時間がかかっているようだ。
たっぷり3秒経ってから、店主はようやく息を吸った。
「俺は大歓迎だが……リヴァイが許すか?」
「へ?」
間の抜けた声がローズの口から漏れる。
なぜここでリヴァイの名前が出てくるのかわからなかったからだ。
「だって姉ちゃん……」
何かを言いかけ、店主は気の毒そうな顔をした。
ローズに? いいや、リヴァイにだ。
「いや、なんでもねぇ。あいつも不憫だなァ?」
「そ、そう言われましても……」
「ま、いいぜ。リヴァイから許可が降りたら働かせてやるよ。俺からもそれとなく根回ししとくぜ」
「いいんですか!? ありがとうございます! 説得頑張ります!」
結局、店主の言いたいことはよくわからなかったが、これで働き口を見つけることができた。残るはリヴァイの説得だ。
意気込み、ローズは家へ帰る。
「ダメに決まってるだろ」
が、返ってきたのはにべもない返事だった。