第2章 Geranium
「でも、どうしてここに連れてきてくれたの?」
よく日が浴びることのできる場所に座り、ローズは言った。
その隣に並んで座り、問いの答えを探す。
本音を言っても笑われないだろうか。馬鹿にされないだろうか。
不安が頭をもたげたが、それより早くリヴァイは口を開いていた。
「……お前と仲良くなりたかった。ずっと何かに怯えてるみてぇだったから。少しでも、安心させられたらって」
ローズは驚いたように目を見開き、すぐに笑った。手が伸びてリヴァイの頭は引き寄せられる。ぽすんっと彼女の胸の中に頭がおさまった。
「ありがとう。心配させてごめんなさい」
「ガキ扱いすんじゃねぇ」
「15歳はまだまだガキです」
「5歳しか違わねぇだろ」
「リヴァイが生まれた時、あたしはもう立っておしゃべりしてました〜」
他愛もない会話が繰り広げられる。誰にも、何にも気を使わない話とはこんなにも楽しいものなのか。
リヴァイは黙り、目を閉じた。ローズの心臓の鼓動がよく聞こえる。
心の底から安心した。このまま眠っても構わないと思えるくらいに。
「……リヴァイ?」
黙ってしまったリヴァイを不審に思ったのか、ローズが呼びかける。起きているという意思表示で身動きすれば、クスッと笑い声が聞こえた。
「あなたに怯えていたわけじゃないの」
優しく、まるで壊れ物でも扱うかのような繊細さでローズはリヴァイの頭を撫でた。撫でられるのは母以外で初めてだ。
「地下街に来る前にいろんな人から嫌なことをされて、それでちょっと過敏になってるのよ。だからあなたが気に病むようなことではないの。……ごめんなさい」
それ以上、ローズは何も言わなくなってしまった。
人にされた嫌なことをリヴァイに話す気はないらしい。
「……いまは、俺がいる」
風に吹かれ、花が揺れる。どれもリヴァイは見たことのない花ばかりだ。
「だから安心しろ」
ローズが来てから、自分はおかしくなってしまったらしい。
知り合って1ヶ月の人間にこんな言葉をかけるなんて。
「ありがとう」
だが今は、この温もりを手放したくないと。そう強く思ってしまった。