第2章 珍カップル、有名になる
首筋に大寿君の舌が這い、歯を立てられる度に体をビクビクさせる。
二人きりに戻り、大寿君の唇が首筋から離れ、乱れた制服が整えられて、フワフワする私を他所に、大寿君は軽く触れるだけのキスをした。
「ったく、このくらいで根を上げてるようじゃ、この先が心配だなぁ?」
意地の悪い笑いを浮かべる大寿君の広い胸に、力なく体を預けた。
大寿君の言う通り、今だけでもいっぱいいっぱいなのに、この先と考えると、私は一体どうなってしまうのか。
不安は勿論なくはない。
そして私の悪い癖がここでも発揮されていた事は、大寿君に気づかれているだろうか。
それを伝えるように、私は大寿君の逞しい胸板を指で撫でた。
その手は簡単に絡め取られる。
「エロい触り方すんな……食われてぇのか?」
その質問はワザとなのか。私が答える答えは一つなのを知ってるくせに。
私が彼を見上げて頷くと、チャイムの音が響いた。
大寿君は私の額に口付けてニヤリと笑う。
「残念……また今度な」
意地悪な彼もまたいい。最近、段々変な性癖に目覚め始めている気がする。
午後の授業の合間の休み時間、私はトイレへ向かう。
ただ、何だか視線を感じる。一人じゃなく、数人の。ヒソヒソされている気もしなくもない。
不思議に思いながら、トイレを済ませて個室から出ようとした時だった。
「ねぇ、聞いた? あの柴大寿に彼女らしい子がいるらしいよ。屋上で抱き合ってイチャイチャしてるのを男子が見たんだってー」
「聞いた聞いたっ! ていうか、あんな怖い人と付き合うとか、どんなチャレンジャーな子なの?」
「二組のさんでしょ? ほら、あのメガネ掛けて真面目そうで地味な子」
まさか、こんな場所で自分の噂を聞く事になるとは。けど、大寿君に彼女が出来る事がそんなに珍しいのだろうか。
「いがーい。柴大寿って女にも容赦なく暴力振るうって聞いたけど、何か弱みとか握られてるんじゃないの?」
「だったら、さんヤバくない? 脅されてたり?」
「可哀想ー。怖すぎて話すのとかマジで無理だわ」
「同じ空間に二人でとか、死にたくなるわ。あの目超怖すぎでしょ。睨まれるだけで殺されそう」
凄い言われようだな。