第2章 珍カップル、有名になる
大寿君が顔を逸らす。
「あんまスカート上げんな……」
何だかんだ、大寿君は照れ屋さんだ。
私のパンツを見たところで、大した問題でもないだろうに。
「そんなに色気のあるパンツ履いてないから、見たところでどうって事……あたっ!」
「お前なぁ、一応俺は彼氏だぞ。どうって事なくねぇーだろーがっ!」
デコピンされてしまった。
「へへへ……」
彼氏。その言葉に、額の痛さより嬉しさが込み上げて、またニヤけてしまう。
「何笑ってやがんだ、ヘラヘラしやがって……意味分かんねぇ奴だな……」
「へへ、好きだよ」
「っ……るせぇっ……」
照れながらぶっきらぼうに放たれる言葉も、真っ赤な耳も愛おしくて胸がギュッとなる。
そっぽを向いた大寿君の頬に触れるだけのキスをすると、深く刻まれた眉間の皺もなくなる。
大寿君が起き上がってしまって、少し残念に思っている私の体がふわりと浮き上がり、大寿君の膝に横向きに座らされた。
大寿君の顔を見ようと顔を上げる。
あ、キスされる。
何て説明したらいいか分からないけど、そんな雰囲気のする目がこちらを見ている。
大きな手が頬を包み、その手に頬を擦り付けると、ゆっくり顔が近づく。
「ンっ……」
唇の柔らかい感触を確かめるみたいに、何度も唇を啄み、押し付ける。
「口、開けろ」
低い声が頭を痺れさせる。
口を開いて、言われてもないのに舌を出すと、フッと妖しい笑みの大寿君がその舌ごと食らいつく。
「ふっ、ぅんンっ、んっ、はぁ……」
「っ、何処でこんなエロいキス、覚えやがった……」
「ふぁっ……たぃっ、んぅ、ンんっ……」
唇から熱さが体全部に流れて、頭の芯がジンジンする。
これ以上したら、駄目な気がするのにやめられなくて、必死に大寿君の舌を追いかける。
大寿君とのキスに夢中になる中、耳に屋上の扉が開く音が届く。
「馬鹿じゃねー……げっ!」
「急に止まんなっ……ぅえっ!?」
数名の声がしたけれど、そちらを見る事は許されず、いつの間にかボタンの外されたシャツから覗く首筋に、大寿君の唇が這う。
「いつまで見てんだ、ああ? いいとこ邪魔すんじゃねぇよ……殺すぞ……」
入って来た人達に凄んだ迫力ある声すら、私には魅力しかなくて。