第5章 珍カップル、我が道をゆく
心底どうでもよさそうに言う。
「見てたのかよ」
頭を掻きながら大寿が気まずそうにしていた。
「彼女達と遊びに行きたかった?」
少し意地悪を言ってみるけど、大寿の眉間に深い皺が刻まれる。
大きな体が迫って来ると、そのまま壁に背をつく体勢になった。
壁ドンをされながら大寿を見上げる。きっと、周りから見たらまるで脅されているのかと聞きたくなるくらいには、さぞかし危険な場面に見えるだろう。
「ごめんね、怒らないで。だって、可愛い子達だったし、大寿も私みたいなのより、ああいう子達の方がいいのかなって」
「アホか、いい加減にしろ。どう考えても、お前のが可愛いだろーが」
彼女を褒めるのに、こんなにも不機嫌に褒める彼氏がいるのだろうか。
でも、私は自然と出た嬉しい言葉に、くすぐったくなった。
「ただ、脚が出過ぎだ」
「普通だってば。大寿だって、格好よすぎだよ」
「それこそ普通だ。おら、行くぞ」
指を絡めて手を繋ぐと、歩き出した。明らかに体格差が違うのに、歩幅を合わせてくれてるのか、歩きやすい。
今日のデート先は、何処へ行きたいかと聞かれた私が大寿が一番好きな場所へ行きたいと答えた為、水族館になった。
豪快な大寿からは想像しづらいであろう、静かな場所。
彼と付き合っていく中で、意外に大人しい生活をしている大寿が、静かな場所を好むのを知っている私は、特に驚く事もなく。
更にサメが好きだというのを知れた事に、大寿らしさを感じたりしている。
水族館に着くと、カバンを探っている間に支払いが済まされてしまい、お金を渡そうとすると「女に出させられるか」と怒られてしまった。
何かで返そうと決意しながら、また手を取られて歩き出す。
人が結構多くて、人に当たらないようにゆったり歩く。
ありがたい事に大寿君が大きいおかげで、これだけ館内が混雑していてもはぐれずに済んでいる。
久しぶりの水族館だから、少しはしゃぎ気味の私に大寿は呆れながらも付き合ってくれた。
普段じっとサメを見る事がないから長い時間サメを見れたのは貴重で、何処か楽しそうだった大寿も見れたからよしとしたい。
基本怖いイメージのあるサメだけど、触れ合い広場のような場所で触れて、意外に大人しいサメもいるんだと知った。