第5章 珍カップル、我が道をゆく
早くに着いてしまったと、ショーウィンドウに自らの体を映して、変じゃないかと見直してみる。
普段、制服以外でスカートなんて履かないけど、せっかくだからと珍しく、コンタクトにしたり、少しお化粧なんかもして、オシャレなんかをしてみたわけです。
髪を整えていた私の耳に、声が届く。
「お一人ですかぁー?」
スマホを触りながら、物凄い存在感を醸し出す大きな男が一人。
普段から格好いいけど、黒を基調とした私服姿が更に男らしくて、たまらなく格好良すぎて目を引く。
見惚れてしまって、可愛らしい女の子達が大寿に声を掛けている事を放置してしまった。
急いで彼の元に歩き出そうとした瞬間、目の前に誰かが立つ。
「こんにちはー。君めっちゃ可愛いねー、一人? 俺等と遊びに行かない? 俺奢っちゃうよー?」
三人組の男の人に囲まれ、足が止まる。見上げると、やたらニコニコしている。
「いえ、待ち合わせしているので、結構です」
「えー? そんな冷たい事言わないでよー。あ、もしかして彼氏だったりする? 女の子ならみんなで遊びに行けばいいしさー」
初めてのナンパを経験して、こんなにもしつこいのかと少しうんざりし始めている私は、どうにかしてこの人達から逃れられないかと考える。
その間にも、彼等の一人が割と強めに私の肩を掴んでくるから、なかなか逃げられない。
困った私は、視線を大寿がいた場所に移すけど、いなくなっていた。
まさか、私が来ないからさっきの女の子達と何処かへと考えたけど、女たらしの男ならまだしも、さすがに大寿に限ってそれはないかと考え直す。
「いぃ、ででででっ! 痛いっ、痛いってっ!」
そんな事を考えていると、肩にあった男の人の手が離れて、痛そうな声が響く。
「テメェ、汚ぇ手で誰のモンに触ってんだ……死にてぇのか、あん?」
大きい体の威圧感が物凄いのに、見ただけで人を殺せそうなくらい鋭く冷たい視線に、男の人達が青ざめる。
颯爽といなくなる男の人達を気にする様子もなく、大寿が私を見下ろす。
「大丈夫か? 何かされてねぇだろうな」
「うん、大丈夫だよ。ごめんね、ありがとう」
私が笑うと、大寿の頬が少し赤くなった気がした。
「それより、声掛けて来た女の子達は?」
「さぁな。興味ねぇ」