第1章 好奇心は恐れをも上回る
鋭くて冷たいのに、目が離せないのは何故だろう。
何人かの生徒が入って来て、ハッとした。
見つめ合う目が離された。
「あ、柴君……」
その代わりに、私の手首が柴君の大きな手に掴まれる。
教室を出て、廊下を柴君が私を連れて歩く様は、みんなからどう見えるのか。
別に抱いて連れてってくれてもいいのに。とか思ってみる。
思うだけならタダだ。
渡り廊下を出て、中庭に移動する。
昼休みには沢山の生徒で溢れるここも、今はさすがに人がいない。
向かい合って立つ。手が離れてしまった手首を見つめる。
「痛かったか?」
「え?」
「手首だ……」
「ううん。ただ、手が、離れちゃったなぁーと」
また驚いたような顔。そんな驚くような事は言っていないのに、やっぱり表情がよく変わる。
自分があまり表情の動かない人間だから、羨ましくもある。
私にももう少し表情の豊かさとか、可愛らしさとか、愛想のいい愛らしさがあればよかったのに。
その方がきっと、柴君だって。
「ふっ、変な女だな」
あ、今笑った。
ヤバいな。想像を絶する破壊力だ。こんな風に笑うんだ。
「手紙の返事だけどな……お前、何で俺なんだ?」
「興味があるから」
「はぁ? 意味が分からん……」
好きとか恋愛とか、正直よく分からない。だけど、分かる事もある。
「何て言うのが正しいのかは分からないけど、柴君見てると、色んな表情見たいし、触りたいし、触って欲しいし、純粋な気持ちから、邪な気持ちまで、全部溢れ出すというか……」
「……それが何で俺なのか、ますます分かんねぇな……」
「手紙にも書いたけど、とにかくまずは柴君の見た目が好きなんだと思う、多分」
「多分かよ……見た目ねぇ……」
柴君が呆れたように「物好きな奴」と呟く。
「女はめんどくせぇ」
ここまでは予想通り。勝負はここからだと気合いを入れた私を、柴君は驚かせる。
「けどまぁ、お前は嫌いじゃねぇ」
まさかの言葉に、私は固まった。鬱陶しいと断られるものだとばかり思っていた。
「他の女みてぇにキーキー煩くねぇし、くっせぇ臭いさせてねぇし、見た目もなかなかだしなぁ。面倒、かけんなよ?」
掛けていたメガネを外され、顎を手で掴まれて上を向かされる。