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強者と弱者は惹かれ合う【東リべ夢】〘柴大寿夢〙

第1章 好奇心は恐れをも上回る




無意識に触っていた。

凄い、ムキムキだ。

この腕に抱かれたら、どんな感じなんだろう。

「おい、三ツ谷、これは何だ? お前の女か?」

「ちげーよ。これって……お前、同じクラスの奴の名前くらいは覚えとけよな……」

「です。柴君、どんな鍛え方したらこんなに筋肉付くの? 何食べたらそんなにおっきくなるの?」

私の質問攻めを、物凄い冷たい目で見下ろす。けど、私はそんな事より、聞きたい事が次から次へと溢れる。

「いつまで触ってる。やめろ」

「あっ……うぅ、残念……」

腕を払われてしまった。

その拍子に少しよろける。三ツ谷がそれを支えてくれた。

「ありがとう、三ツ谷」

「お前、相変わらず怖いもんなしだな……」

そして、靴を履き替える柴君に、私は手紙を差し出した。

「……今度は何だ……」

「手紙」

「んなこたー分かる。何のだって聞いてんだよ」

「ラブレター」

「…………は?」

驚いた顔。また初めて見る顔に、嬉しくなる。

「ニヤニヤしてんじゃねーよ、気持ち悪ぃ女だな……」

意外と表情豊かな彼に、ますます興味深々な私は手紙を見つめる柴君に押し付けるように手紙を渡した。

「じゃ、返事待ってるね」

「おいっ……」

「柴君、気をつけて帰ってね。三ツ谷も、部活頑張ってね」

止める声も聞かず、私は二人を背にしてその場を後にした。

モタモタしてたら、手紙を返されかねないから。

返事は多分期待出来ないけど、少しでも私を彼に刻みつけられればいい。

後は押しまくれだ。しつこいのは私の得意分野だ。

翌日、私はいつも通り早くに登校して、教室の花瓶の水換えをしていた。

生徒がほとんどいない、朝早くの教室の静けさが好きだ。

窓を開けて、空気が新しくなる瞬間の風がカーテンを揺らした。

「いい朝だ……」

私は伸びをする。その手が、何かに当たる。

「……おい」

まさか誰がいるとは知らなくて、顔だけでその人を見上げる。

「あ、柴君だ、早いね。おはよー」

「お前、俺が怖くねぇのか」

「何で? 柴君は格好いいよ」

いつもみたいに相変わらず無表情な彼の顔が、見下ろす目が私を捉えている。

何だろう、妙にソワソワしてしまう。凄く変な感じだ。
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