第4章 柴大寿を尻に敷く女
そのまま私を抱く大寿君の腕に、力が入る。
「おら、んな事聞いてねぇで、寝ろ」
「ふふっ、大寿君、大好きだよ」
「っ……そうかよ……」
照れているのが、見なくても分かるから、また笑ってしまう。
静けさを取り戻した部屋で、また眠気が襲って来て目を閉じた私の耳に、大寿君の静かな低い声が届く。
「……好きだ……」
遠くでそれを聞きながら、私の意識は薄れて行った。
翌日、腰のダルさはマシになったものの、運動不足な私の体には大きなダメージになっていたようで、本調子じゃないまま学校へ登校する羽目になった。
少しボーッとしていた私は、廊下で誰かにぶつかった。
「おっと……悪ぃ……って、じゃん」
「あー、三ツ谷か」
「おいおい、大丈夫かよ。何か疲れてんじゃん」
私の個人的な考えとしては、恋人との行為を当たり前だと考えているので、特に隠すつもりも恥ずかしさも特にないので、三ツ谷に普通に答える。
「大寿君のというか、男子の精力をナメてたら、ちょっと返り討ちに合いまして」
「おい、大寿と他の男を一緒にすんな。大寿は多分色々と規格外だろ、絶対」
体験していないのに、やっぱり分かるんだろうか。同じ男の勘みたいな感じだろうか。
「寝癖くらいちゃんと直せ。そんなんじゃ大寿に愛想つかされるかもよ?」
三ツ谷が私の髪を指で梳く。
その手が突然掴まれ、私は体ごと誰かに包まれる。
「人のもんに気安く触んじゃねぇよ、三ツ谷」
「おっかねぇ彼氏だな全く」
掴まれた手を払い、三ツ谷は苦笑する。
大寿君に後ろから抱きすくめられ、私はそのまま上を見上げると、相変わらずの不機嫌な顔が更に不機嫌で、眉間の皺が凄くて、血管が浮いてるように見えなくもない。
私は大寿君の腕を無言で離すと、案外すんなり離れて驚いたけど、大寿君に向き合う。
「怖い顔になってるよ。格好いいけど」
「あん? 誰のせいだとっ……」
不満そうな顔で私を見下ろす大寿君のネクタイを引くと、顔が近づく。
「私は大寿君以外に興味無いけど、ヤキモチは凄く嬉しいよ」
触れるだけのキスをして、体を離した。つもりだったけど、大寿君の大きな手が私の腰に回る。
「もしかして、お前、体、辛いか?」
頬を撫でて聞く。