第1章 好奇心は恐れをも上回る
世の中には、気になる事が多すぎる。
何か一つ解決すれば、また新しく気になる事が増える。
毎日何かを気にしている。退屈しないけれど、たまに疲れてしまう。
けど、やめられない。これはもう、どうしようもない事だ。
そして私は今、物凄い衝撃を受けている。
柴大寿。
彼には色んな噂がある。その噂がどこまで本当なのかが、知りたくて仕方ない。
今の私の全ての好奇心が、彼に向けられている。
そして、ここ最近彼をひっそり観察していて思った事は、聞いている程、悪い人には思えない。
物凄く身長も体も大きくて、目つきも見ただけで人を殺してしまいそうなくらい迫力があるのに、特に何か問題を起こすわけでもない。
授業もちゃんと出て、休み時間には寝てたり、とりあえず何か普通だ。
内緒だけど、寝顔は結構可愛かったりする。
お昼ご飯なんて、この間はパンをもぐもぐなんてしてるもんだから、可愛さに悶えそうになった。
私は思った。彼をもっと知りたい。知るとなると、一番どうすれば効率がいいか。
そして、私は彼と話した事もないのに、今ラブレターなるものを書いている。
彼の下駄箱の前に立つ。
「あれ? ? 何してるんだ?」
「あぁ、三ツ谷か。いや、今から柴君にラブレターを出そうかと」
私がそう言うと、同じクラスの三ツ谷隆が目を見開いて固まる。
そんなに驚く事なのだろうか。
「お前、正気か?」
「何で? 駄目?」
眉間に皺を寄せて不思議そうに聞いてくる三ツ谷に、私は疑問を投げかけた。
「いや、別に駄目っつーわけじゃねぇけど……つーか、お前あいつの事、好きなの?」
好きか。どうなんだろう。気にはなるし、可愛いとも思う。知りたいとも思うし。
これは、好きと何が違うんだろうか。
「……好きって、そういう事じゃなくね? まぁ、きっかけではあるだろうけど」
頭を掻きながら、唸る三ツ谷の背後に人が立ち、私達に影が出来る。
「何してる。邪魔だ、どけ」
柴大寿、彼だ。
近くで見れば見る程迫力がある。何か、大きくて、ガッチリしてて、格好いい。
触りたい。
「おい、何してる」
「柴君て、鍛えてる?」
「あん? つか、お前、誰だ」
腕に触れる。