第4章 柴大寿を尻に敷く女
いつの間にか眠っていた私を腕に包み込みながら、大寿君は眠っている。
眠っている時ですら、眉間には皺が刻まれている。
「痛くないのかな……」
タトゥーを撫でていると、頭上から声がした。
「痛くねぇよ……くすぐってぇ……」
眠そうに答える大寿君を見上げる。
「大寿君……私ね、三ツ谷じゃなくて、大寿君が……大寿君だけが好きだよ」
面倒でややこしくて手が掛かる、自分勝手でわがままで上げるとキリがないくらい欠点だらけの、魅力なんて探す方が大変な私に、いつ彼が愛想をつかせて離れて行ってしまうのかと、考えるだけで怖くて震えてしまう。
けど、言わないといけない。私なんかの為に彼の大事な時間を割きたくないから。
これ以上、もっと酷い醜態を晒してしまう前に。
「もう、迷惑かけないから……完全に会わないのは流石に難しいけどっ、出来るだけ関わらないようにする、から……大寿君が私を嫌いでもいい、から……好きでいる事だけは、許してくれますか?」
嘘だ。嫌われたくない。嫌われるなんて、考えただけで消えてなくなりたくなる。
鼻の奥がツンとする。
「お前はほんとに一人で突っ走ると止まんねぇな。お前こそ人の話をちゃんと聞け」
大寿君の手が頬を撫でて、優しい目が私を映す。
そんな優しい目で見つめないで。それでなくてもグラグラな私の決意が揺らぐ。
「、好きだ。今更離れるなんて、許さねぇ。俺を惑わせた責任はしっかり取ってもらうぞ」
今、私は何を言われたのだろう。
頭が正常に働かない。思考が、停止する。
その間に、大寿君は私の上に覆い被さる。
「惚けてんなよ。今度はしっかり意識保っとけよ? 俺は中途半端な事はしねぇぞ? お前相手だからな……容赦は、しねぇからな……」
「エッチ……するの?」
「シたかったんだろ?」
大寿君の挑発する笑い方が、妖艶でゾクリと体が粟立つ。
唇で私の胸元のリボンを解く仕草も、これから始まる行為を予測させるようで、私の興奮を誘う。
「あの、大寿君まっ、て……」
「あん? 今更嫌がってもやめねぇぞ」
「違うの、手を……」
大寿君は私の言葉に困惑して「手?」と首を傾げる。そんな彼に、私は両手を引っ付けて差し出す。
「さっきみたいに……縛って?」