第3章 ライバルは三ツ谷、その男。
誤解を解きたくても、私の唇は今だ大寿君に塞がれたままだ。
「んっ……ぅ、ンんっ……はぁっ……」
「おら、舌しっかり絡めろ……」
「たいっ……ンっ、まっ……ふ、ぅんっ……」
私の言葉は全てキスで掻き消されてしまい、弁解すらさせてもらえないまま、キスの気持ちよさに頭が溶けてしまいそう。
でも、誤解されたままは嫌で。葛藤と歯痒さに意味の分からない涙が滲み始める。
「泣くくらい嫌か? ああ? 俺と違って三ツ谷は優しかったか? 優しく抱かれたきゃ、三ツ谷に頼め」
どうしてそうなるんだ。
私は散々大寿君が好きだと言い続けていたのに。確かに三ツ谷と作戦とはいえ、焚き付けたのは私だけど、信じて貰えなかったのは、辛い。
突き放すみたいに言った言葉に、悲しさと腹立たしさが溢れて、縛られた手を大寿君にぶつける。
大寿君の胸辺りを何度も叩く。
「ぃってっ……おまっ……」
「ぅっ……ひっ、私、っ…大寿くっ、がっ……好きって、言ったっ!」
「ああ?」
困惑を顔に貼り付けた大寿君に、私は言葉を投げ続ける。
「好きってっ、言ったっ! 大寿君、しかっ、見て、なっ……ふっ、三ツ谷は、関係ないっ……ぅ、大寿君のばかあぁっ……うぅーっ……」
涙でぐちゃぐちゃになって、喋れなくなっても、感情は溢れて止まらない。
自分でも怒るのは間違ってるのは承知している。大寿君は何も悪くないから。
でも、こんな感情は初めてで、どうしたらいいか分からず、何かにぶつけるしかなくて。
ノックが聞こえるけど、私はそれを気にする余裕はなく、暴れる私の相手に忙しい大寿君が答えるより早く、容赦なく扉は開かれる。
「兄貴ーいるー? 頼まれてたやつやっと手にっ……」
急いでいる様子の声が聞こえた。けど、その後静寂が訪れる中、私の嗚咽混じりの泣き声だけがする。
入って来たであろう誰かは、この状況をどう理解するのか。
多少乱れた制服で両手を縛られた私を、ベッドに組み敷く大きな体の大寿君。しかも私は縛られた腕を握られたまま泣いている。
案の定、その人は叫ぶ。
「ゆ、ゆゆゆ、柚葉ーっ! あに、あ、兄貴がお、女にっ! 女にーっ!!」
「は? あんた何言ってんの。意味分かんないんだけど。ちょっと落ち着いて話なさっ、い……よ……は?」