第3章 ライバルは三ツ谷、その男。
何も言わず、三ツ谷の胸ぐらから手を離した大寿君は、その手で私の手を取る。
「三ツ谷っ、ごめんなさいっ……」
そのまま廊下に投げ出された三ツ谷が、私に手を上げて笑顔で応えたのが見えて、特に酷い怪我はなさそうで少し安心する。
私のせいで、三ツ谷にまで迷惑を掛けてしまった。
浅はかだったと、私は自分を責めた。
こんな事なら、自分だけでどうにかするべきだったんだ。
何も話さず、ただ前を歩く大寿君に声すら掛けられず、私は歩く。
どのくらい歩いただろう。
大きな家に入って行く。大寿君の家なんだろうか。
先に家に入らされ、広い玄関に圧倒されていると、後ろで鍵の閉まる音がする。
こんな時なのに、大寿君の家にお邪魔出来る事に喜ぶ自分もいて。
背後に立つ大寿君の威圧感も、私には恐怖なんてなくて、見下ろされる目が冷たいものじゃないのも、私には分かる。
相変わらず眉間には深い皺が刻まれているけど。
顔だけで後ろを向いていると、すぐにまた手首を掴まれ、引っ張られる。
靴を揃える事すら出来ないまま、二階に上がる。
一つの部屋へ入るなり、ベッドへ投げられた。
初めて、彼が私にする乱暴な行いだ。
「で? 彼氏の前で、他の男とイチャついてた言い訳は? 俺は優しいから、聞いてやらねぇ事もねぇぞ?」
挑発するみたいに言う大寿君の顔は笑っているけど、目はいつもと違って少し怖い。
こんな時でさえ、私は彼の違う顔をもっと見たくなっている。
計画が上手くいっているのかはよく分からないけど、今のこのベッドへ押し倒されて組み敷かれ、大寿君に覆いかぶさられている状況は、私には嬉しいハプニングだ。
大寿君は、これが私を喜ばせるだけだという事が分かっているんだろうか。
「言い訳なんてしないよ」
だって、言い訳する程三ツ谷とは何もないなんだから。
私に跨って上半身を起き上がらせた大寿君は、上着を脱いで、自らの制服のネクタイを外した。
「悪い子には、お仕置しねぇとなぁ……だろ?」
ニヤリと笑いながら、ネクタイで私の両手を縛る。
色々とエッチだ。
「俺と三ツ谷の二人をはべらそうって?」
「ちがっ……」
「黙れ」
これはマズい。色々と変な誤解が生じてしまっている。