第3章 ライバルは三ツ谷、その男。
彼の気持ちを聞きたいし、あわよくばもっと彼と深い関係になりたいのです。
そりゃぁ、もう、どっぷりと。
「付き合ってんなら、今のまま一緒にいりゃ、大寿だって絆されんじゃね?」
「でもそれってさ、その逆だって有り得るわけじゃんか」
我ながら、大寿君と付き合うようになってから、だいぶ弱気になっている気がする。
もしかしたら、他にいい子が現れないとも限らないし、私な嫌われるかも知れないし。
「さんて、本当に柴君の事好きなんだねー。変な噂色々あるけど、何か羨ましいなー」
部員で同じクラスの女子が、ミシンを使いながら話に入ってくる。
「私の友達も試した方法、ちょっと試してみない? ただ、ある意味賭けになるけど……どう? やってみる?」
彼女の提案には、男子の、三ツ谷の協力がいる。
名付けて『三ツ谷とイチャついて、大寿君はどういう反応をするのか調べてみよう作戦』という内容だ。
「ベタだな。マジで、んな事で分かるもんか?」
「ベタをナメちゃ駄目だよ、三ツ谷部長。そのベタで友達の彼が好きを自覚して、告白されて付き合ったし、上手くいく人もいるわけよ。柴君はどう出るかは分からないけど、やってみる価値はあるんじゃない?」
好きだとかも関係するけど、そもそも大寿君はヤキモチを焼いたりするのだろうか。
独占欲とかあるイメージがない。
果たして上手くいくかは分からないけど、早い方がいいと私達は早速実践してみる事にした。
スマホを開くと、大寿君からメッセージが届いていた。
三ツ谷と話があるからと伝えていたから、先に帰ったと思っていたけど、まだいるみたいだ。
とりあえず下駄箱近くにいるみたいだから、部員に断りを入れて三ツ谷を借りる。
カバンを持って二人で下駄箱へ向かう。
大寿君を見つけられず、キョロキョロする私の前を歩く三ツ谷が立ち止まって振り返る。
「俺に合わせろ」
静かにそう言うと、三ツ谷は私と位置を入れ替えて下駄箱を背にして私を立たせ、私の髪に手を伸ばす。
「髪跳ねてる。お前肌綺麗だよな。お洒落とかしねぇの? ちゃんとすりゃもっと可愛くなんじゃね?」
「三ツ谷は私を可愛いと思ってくれてるの?」
「そりゃ、もちろん」
柔らかい笑顔を浮かべる三ツ谷に、影が差す。