第3章 ライバルは三ツ谷、その男。
私は今、三ツ谷とお茶をしております。
「いつ来ても、ここはまるで職場みたいだね」
ミシンの音と、女子達の忙しない声。
「部長ー、ここってこの生地でいいですか?」
「うん。後、そこの糸はこっちの使った方がいいよ」
ここは三ツ谷が部長を務める部活の部室だ。
何気によくお邪魔するので、部員達も私の存在を気にする事なく活動をしている。
「大寿の気持ちねぇ……つか、本人に聞けよ」
「聞いても『さぁな』ってはぐらかされるんだもん。何回も聞くのは何か違うし……」
「普段しつこいお前が食い下がらねぇのも珍しいじゃん」
確かに、しつこいのは長所でもあると思っていたけど、大寿君に関してはそれが発揮出来ないでいる。
「確かに……でも、最近はあんまりしつこくして、嫌われたりしたくないっていうか……」
「へー、珍しくビビってんのかよ。大寿相手にビビらない肝据わったお前がねぇ」
三ツ谷のお墨付きは嬉しいけど、それが発揮されないなら意味がない。
「一応付き合ってるし、キスもいっぱいしてるから嫌いとかじゃないとは思うんだよ」
「……ん?」
「はっ! そうかっ! はっきり分からないから、それ以上手を出してくれないのかっ!」
「ちょ、待て待てっ! 話が飛び過ぎだろ。つーか、話が見えねぇ」
三ツ谷が呆れたみたいに言う。ただ、三ツ谷の引っかかる部分が分からない。
「お前等がどこまでしたかなんて聞きたくねぇけど、アイツも意外とまぁまぁやる事やるんだな」
そんなに意外な事なのだろうか。
「大寿君てモテない?」
「アイツの場合モテるモテないの前に、普段から威圧感すげぇし、女からしたら怖さが先に来るんだろ。男だけじゃなく女相手にも態度変わらねぇから、そもそも女といるのは貴重だからな」
確かに、下駄箱で会って凄まれた時の事を思い出す。
私は特に怖さは感じなかったけど。
「……あんなに格好いいのに……」
「大好きかよ」
「うん、大好きだよ」
「あー、そうっスか……」
三ツ谷が言うように、大体の女の子は三ツ谷みたいな優しくて強くて頼りになる兄貴肌な男が好きなんだろうけど、私からしたら二人の違いがそこまで分からない。
大寿君だって、強いし、頼りになるし、優しいし、格好いいしお兄ちゃんなのに。
何が違うの。