第5章 本当の入学初日
「イチニツイテ、ヨーイ…ドン」
「俺は一秒以内に走れる!!」
クラウチングスタートを決め早口でそう唱え個性を使う。
ピコンッ
「0秒58」
「よっしゃああ!!一秒切った!!」
「「「「「「「はぁあああぁあ?!」」」」」」」
「どういうこと?!」「すごすぎでしょ!」「あんなに速いの初めて見たよ〜」「いいじゃんいいじゃん!」「どういった個性?!」「ズルすぎだろ!!」「すっげーーー!!」「お前…女にモテるだろ!絶対そうだ!!」「さすが一心君!!」「日頃どんな努力をすればそんな!!」「…うるせ」
(んんんんん……!!聖徳太子ぃ〜…)
「おい、静かにしろ。時間を無駄にするな。」
全員が散った所で先程一緒に走った相手に話しかける。
「なぁなぁ! 名前なんて言うんだ?」
「………!!」
相変わらずオロオロとしながら指をちょんちょんと合わせて離してと繰り返す。
「大丈夫!ゆっくりでいいからさ!俺は言葉一心!」
「……………コ…ウダ……コウ……ジ……」
「そっか!!口田甲司!!良い名前じゃん!多分席も口田の後ろだと思うから何あったらよろしくな!」
照れ臭そうにしながら小さくコクンッと頷いた。
「…………。」
口田が一心の後ろをスッと指を指す。
そこには緑谷が立っていた。
(そういや何かさっき言いかけてたよな…)
「ごめん口田! 後でな!」
コクンッと頷いた口田と別れてから緑谷の所に向かった。
「あ、あのね!さっきの話の続きなんだけど…その……て、てて手を……握ってくれてありがとう…」
口田の様にモジモジしながらそう告げる緑谷にニヤニヤと笑う。
「なんだなんだ〜?別に構わねぇよ! また辛くなったら握ってやるし気にするな!」
そう返事をした後、何か覚悟を決めたのかさっきとは違う真剣な顔を向けた。
「僕の事……君に見てて欲しいんだ」
「………。」
一心はその言葉に目を丸くさせた。
それに対して何かを言おうとしたが緑谷を呼ぶ飯田の声が聞こえ、さっきの緑谷の真剣な表情は何処に行ったのやら彼はいつもの表情に戻っていた。
「それじゃ」とこちらにそう告げて離れていく後ろ姿をただただ見ていた所、ドンッと腕に何かがぶつかってきた。
「ボサッとしてんじゃねぇよ」
爆豪だ。一体どこから来たのか…というより何故ぶつかってきた…