第17章 忘れられない水曜日 中編
この敵意が飛んできたのは相澤がヴィランの群れに飛び込んですぐだった。全身針で刺されたような感覚にすぐさま全方位に精神を研ぎ澄ませ敵の気配を探るも未だに何処に居るのかも絞れない。いや、正確には絞らせないようにしているに近い…
動き回っている
目で追えない圧倒的なスピードで
そのスピードは【オールマイト】に匹敵する速さだが、オールマイトはこの場に居ない
しかし、対応出来る人間がこの場に一人いる。
【奴】が狙いを定めた。
一心は出久の手を解き、【それ】よりも速く走り目の前に居た飯田の背中を「ごめん!」と言い強く押した。
「のわ!!」飯田は突然の事にバランスを崩し前に居た障子にぶつかる。
その瞬間、爆音と共に五箇所のビルから土煙があがり一部のビルは真っ二つに折れ崩れ落ちた。出久を除き驚きながらも振り返った皆の視線に映ったのは
宙を舞い落ちた一枚の血の付いたハンカチだった。
それを見た全員は全てを察し血の気がサッと引く、出久は爆音がしたビルに振り返り全員がその名を呼んだ。
「「「「「一心!!/一心君!!/言葉!!/言葉君!!/一心ちゃん!!」」」」」
その声は相澤にも届いていた。突然の爆発音に何事かと思っていたが全てを察し目を見開いた。
「一心ッ!!」
そして……手が大量に付いたヴィランはニタァと笑う。
「良いねぇ…【作戦通り】だ。このまま順調に行くと……【先生のおつかい】も一緒に済ませれちゃうのかな?」
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一心side
遠くで皆の声が聞こえた気がし、俺はゆっくりと目を開ける。見知らぬコンクリートの天井が視界に入り全てを察する。
(あぶね…一瞬気を失ってたか。…にしても酷い目にあった…五回も一瞬にしてビルに身体を叩きつけるとか……殺す気かよ。本当にヴィランっていつも容赦ないなぁ…
捕まる前にスピードを上げる時間しかなくて上手く身体を硬化出来ず、ほぼ生身でこれは……流石に骨にヒビもいっちゃうよね)
やらかしたなぁと思いながらタハハと笑いゆっくりと身体を起こすと副作用と怪我で口から血を大量に吐きだした。
ビルの横腹に空いた大きな穴からは黒い影が伸び、バサバサッと大きな翼の音を鳴らしながらこれまた大きな唇でニィッと俺に笑った。
「ハハッ…誰かさんみたいに良い笑顔だことで」
俺はふらつきながら立ち上がった