第5章 本当の入学初日
noside
あれからトイレを済ませた一心は1ーAの教室に向かっていた。
(…ん?……ん〜〜??)
ドアの前に立っている見覚えのある少年を見つけニヤニヤとしながらゆっくりと近付き腕をドンッと回す
「うわぁああ?!?!」
すごい驚いたのか少年の身体がビクビクッと震えた。
そしてビックリした表情で一心の顔を見た。
「ごめんごめん! ビックリさせたくてさ〜♪
俺の事覚えてる?」
ニヒヒッと笑ってみせると緑髪の少年のビックリした顔が消え、むしろ少し泣きそうな顔をする。
(やばっ?!泣かせたかな?!)
「ごめん!! 泣かせるつもりはなくて!!あばばば……」
「うん…うん…わかってる。覚えてるに決まってるじゃないか…忘れた事なんてないよ…僕を助けてくれた君を…忘れるわけないじゃないか」
緑の瞳をウルウルとする少年の眼をハンカチで拭ってやる。
「そんな大袈裟だろ?たかが、
『試験日に転けそうなのを支えた』
ぐらいで」
「………え」
緑髪の少年の時が止まったかのように潤んでいた瞳もピタッと固まってしまった。むしろガーーーンッとショックを受けたような顔をしている。
(……???)
「えっと……大丈夫??おーい……」
「……あ!!うん、だ、だだ大丈夫!!うん!!……ダイジョウブ……」
ガーンッガーーンッとショック音が響いてきそうな顔をしている。
(全然大丈夫じゃ無さそう!やっべ!!また地雷踏んだかも!!)
「なんかごめんな!?
……あ、あぁ!!そうだ!!名前まだ教えてなかったよな? 俺は『言葉一心』よろしくな!」
「………。僕は『緑谷出久』」
「緑谷出久!!いい名前じゃん!!」
「……一心君も」
ヘヘッと笑う一心に緑谷はぎこちない笑顔を浮かべる。
「んじゃ! ドア開けるぞ!」
「……うん」
扉を開ける一心の横顔を見ながら緑谷は密かに思う。
(知ってるよ、君の名前。
君は昔も僕の名前を良い名前だと褒めてくれた。
試験日、君と偶然会えた。
髪の色が変わっていて一瞬君だと分からなかった。
けど、
分かったよ。
僕が憧れる大好きな言葉一心君って事。
君が忘れても僕は忘れない
君がしてくれた事。
君が助けてくれた事。
一心君、君が忘れてしまったなら僕の事を見てて
必ず思い出させて見せるから)