第17章 忘れられない水曜日 中編
「なんだアリャ?!また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
切島はそう言い、出久が一歩踏み出そうとした時
「駄目だ!!」「動くな!!」
一心と相澤が止め、声に驚いた皆はビクッと身体を震わせた。
(い、一心君のこんな声始めて聞いた……ここまで戦闘態勢剥き出しなのも……もしかして……あれは……)
出久がそう思っていると相澤はゴーグルを付け、一心は既に個性を発動しているのか口から蒸気を吐き出した。
「あれは……ヴィランだ!!」
その言葉で一気に空気が張り詰めた。
そして、個性で視力を上げていた一心は目を丸くさせていた。脳みそが露出した異様な見た目のヴィラン……左腕がビクッと反応するも構ってられるかというふうに強く強く拳を作った。
黒い霧状のヴィランと手を大量に付けたヴィランが何か会話をしようとしている。何を企んでるのか盗み出せるかと思い耳を澄ませていると、別のヴィランがガパッと口を開けた。
(なんだ??)
疑問と同時にそのヴィランは雑音とも言えるほどのけたたましい奇声を発した。
「うるせ!!」「なんなんこれ!!」「すっげぇ不快!!」
けれどすぐさま相澤の個性で音は消えたが、一心にはそれで十分だった。左耳から血が垂れ、思わずしくったと舌打ちをする。個性を解除したが間に合わなかったようだ。
「大丈夫ですか?!」
八百万がハンカチを出し一心の血を拭く。
「アホか!!無茶すんな!!」
相澤に怒られた一心は少ししょげる。そしてあの大量に手がついたヴィランに視線を向けると
そいつの目は笑っていた。
ゾッと寒気がした。
(もしかして……アイツら生徒一人一人の個性を把握してるのか?!少なくとも俺は……把握されてるみたいだな……)
そう思っていると切島がヒーローの学校に入り込むなんて馬鹿げている事を口にし、八百万は13号に侵入者用センサーを聞き、轟は冷静に分析した。
(轟の言った通りこれは念入りに計画された犯行だろうな……だけどどうやって外部が授業のカリキュラムを知れたんだ?……いや、まさか!でも、違うとは断言出来ない。
俺の推測が合ってるとするならばアイツらはオールマイトがいると分かっててわざわざ来た事になるんじゃ!?本来ならヴィランにとって自殺行為だけど……オールマイトをどうにかする手段を考えてきたって事になるぞ……まずいな…)