第17章 忘れられない水曜日 中編
13号の説明を聴きながら一心の心にグサッと刺さるものがあった。
(一歩間違えれば容易に人を殺せる……行き過ぎた個性……か……)
不安な感情が少し顔を出し一心は左腕を右手でギュッと握った……その時に気が付いた。
(……あれ?
左腕の震えが止まっている……手を動かしてもなんの違和感も感じない!それに……)
一心は静かに深呼吸をし、吐き出した
(朝から感じてたあの『嫌な予感』が無くなってる!!心が軽い!!変な寒気もしない!!むしろ絶好調!?良かった〜…授業始まる前に収まって……
まぁ、リカバリーガールが言ってたようにまだあのムカムカとした物はあるけど……これぐらいなら全然大したことない)
「以上!ご成長ありがとうございました!!」
パチパチパチ「おおお!!」「ステキー!!」「ブラボー!!ブラーボー!!」パチパチパチ
一心も心置き無く拍手をした。
「よし、そんじゃまずは……」
相澤がそう言った時
消えたはずの『嫌な予感』はドロリッとした【嫌な物】に変わった。
「ッ!!!…ッウプ!!オエッ!!」
突然の気持ち悪さに一心は思わず嘔吐く
「大丈夫か言葉!!」「言葉君!?」「一心君?!」「大丈夫?!」「どうした?!」
その様子に一気にザワついた。近くに居た芦戸と青山が一心の体を支え、直ぐにイレイザーヘッドが駆けつける。そんな中ビリビリと音が鳴るのと同時に照明が切れた。
「なになに?こんな時に照明壊れた?」「飯田、言葉を保健室に頼めるか?」「はい!!全速力で行きます!!」
「……ッッゴフッ!!ま"、で……!!ッウプ!!」
(嘔吐いてる場合じゃない!!!落ち着け!!!)
ゴクッと出そうな物を全部飲み込んだ。
「イレイザーヘッド!!!皆を、早く!!!」
一心の切羽詰まった表情と声に相澤はハッとした
(…ッまさか!!)
けれど……遅かった……
噴水の前に黒い穴が開き、一気に黒い霧のように広がった。その穴からは【嫌な物】が溢れ出た。
そして……穴から手が伸び誰かがこちらを覗いていた。
(同じだ……ッ!!朝から感じてた嫌な予感はこれだったんだ!!)
一心は口元を拭い、芦戸と青山にお礼を言うとクラスメイトを護るように素早く前に立ち、イレイザーヘッドはすぐさま戦闘態勢に入る
「一塊になって動くな!!13号生徒を守れ!!」