第17章 忘れられない水曜日 中編
そんな事を一心が考えていると、相澤はテキパキと指示を飛ばす。13号に避難指示を、雷に個性で連絡を取るように指示をし
そして、相澤自身は一人で戦うつもりだ。それが分かった一心はすぐさま戦う意思を示す。
「イレイザーヘッド俺も!!」
「駄目だ!!お前も13号の避難誘導に従え」
だが、その言葉はすぐに遮られてしまう「でも!!」と反論しようとしたが相澤が言っていた『特別扱いはしない』という言葉を思い出し何も言えずギリッと歯を鳴らし「……分かった」と声を出した。
けれど、一心以外にも相澤の戦い方をよく知る人物がいた。ヒーローオタクの緑谷出久だ。
相澤の戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だという事「正面戦闘は……」と言葉を詰まらせると
「一芸だけじゃヒーローは務まらん」
と相澤は言い放ち「13号!任せたぞ」と言うとヴィランの群れへ勢い良く飛び込んだ。
相澤はメディアの露出を嫌っているため知名度は低い。あのヒーローオタクの出久さえゴーグルと抹消が無ければ分からなかったレベルに……だとしたらヒーローオタクでも無いヴィランからすれば……
……どう見える?
「射撃隊行くぞぉ!!」「ありゃ誰だ?!」「知らねぇが一人で正面来るとは」
「「「大まぬけ!!」」」
相澤が個性を消すと何が起こったのか分からず慌てるヴィラン三人まとめて捕縛し互いの頭を頭突きさせ気絶させる。
……知名度が低いというのもまた武器となる。
しかし、相澤でも消せない個性があるがそんなものはとうの昔に対策済みである。
多対一だが、バタバタと敵を倒していく相澤に手が大量に付いたヴィランはゆっくりと分析し嫌気を出し、同じく出久も分析し関心を持っていると
「分析している場合じゃない!二人共早く避難を!!」
と飯田に声をかけられる。出久が隣を向いてみると一心も戦う相澤の姿を見つめていた。
「一心君!僕達も早く行こう!」
けれど、一心は一歩も動き出そうとしない。
その表情からは何を考えているのかすら読み解くことが出来なかったが、出久は一心の手を握りもう一度「行こう!」と声をかけ一緒に走り出した。
一緒に走る中、一心は意識を周りに飛ばし
【それ】を探していた。
(…何処だ?…どこから感じるんだ?あの脳みそが露出したヴィランと同じ者が……
もう一人いる
俺達に敵意を飛ばしているッ…!)