第17章 忘れられない水曜日 中編
出久はこの光景に信じられないといった様に頭を抱えブルブルと震えていた。
そして爆豪の相変わらずの口の悪さに飯田は注意し爆豪は言い返すそこに上鳴も加わりバス内は一気に騒がしくなった。
そんな様子に麗日は楽しそうに笑い八百万は低俗な会話だと言い少し嫌そうだ。そんな車内の雰囲気に
(いいな……凄く良い)
そう一心は密かに思いながら自然と口角が上がる。その時チョンチョンッと後ろの席に座っていた瀬呂に肩を叩かれる。
不思議に思いながら振り返ると瀬呂は耳元でヒソヒソと話す。
「言葉はどう思う?あんな性格だけど爆豪人気出ると思うかなぁ〜って俺らよりも色々知ってそうだし……そのへんどうなわけ?」
楽しそうに話す瀬呂に一心は「ん〜…」と考え込む。
「確かに勝己は口悪いし喧嘩早いし直ぐにアイアンクロー決め込んでくるし出久にはよく噛み付くけど……なんだかんだ不器用で素直じゃないだけで根は良い奴だし……それにね、勝己は…。………。」
一心は少し前の事を思い出す。
『俺らとは生きてる世界違うわ』
(それはたまたま聞いてしまった言葉だった。
その言葉を聞いた瞬間トンッと誰かに背中を押されて俺だけ真っ白な空間に出された感覚になった。背後を振り返れば遠くで楽しそうに笑うクラスメイト
ねぇ、待ってよ…俺はここにいるよ。
俺も……入れ……
いつもの様に笑い飛ばせば良い。そう思いながら皆に手を伸ばそうとしたけれど……
やめた
あの場に行ったとしても俺を見た瞬間きっと取り繕った顔をしながら嫌悪感を隠した言葉を言うだけだ。
もうこの距離はどう足掻いても消えない。あの場所に俺の居場所は無い。
なら、俺はここから眺めてよう。
ただ、何もせずに……皆がこっちを向いた時に笑って手を振ればいい。来た時に話し、去るなら背中を見送ればいい。
これが俺と皆の丁度いい距離感なんだとそう思った。
でも、一つだけ……たった一つだけ……俺の我儘が叶ってくれないかな……
なんて……淡い期待も捨てた。
叶うわけないって思ってた……のに)