第17章 忘れられない水曜日 中編
「ッ!?す、すまない!!もう見ない!!」
飯田はヘルメットの奥で目を丸くさせながらも勢い良く身体ごと一心に背を向けた。飯田の心臓はバクバクと音を立てた。
(ど、どどどどどうしてそんな照れる顔を?!ぼ、僕はそんなに恥ずかしがるような事をしただろうか…?!も、もしかして僕が知らないだけで相手のボタンを留める事も物凄く恥ずかしい事なのか?!それとも僕の発言が原因か?!た、確かに今思えば少し恥ずかしくも思える……ッ!!
そしてあの顔をされてしまったら何とも言えないような犯罪を犯してしまったような罪悪感もある……ッ!!)
グルグルと頭の中で考えが思い浮かび頭がオーバーヒートしそうになる。そんな中、一心が「あー…」と気まずそうに声を出した。飯田は我に返り兎にも角にも謝る事にした。
「言葉君すまない!!決して変な事を考えてた訳では無く本当にぼ、僕は無実なんだ!!」
飯田は自分でも何を言っているのか分からず、必死にまた言葉を発しようとしても余計にこんがらがって来てしまう。そしてテンパッている飯田に一心は吹き出した。
「無実なのは知ってるよ!ってかなんの話ししてんだ飯田〜!」
飯田の背中をウリウリと一心は小突いた。
「まぁ、そこまでテンパらせたのは俺のせいだな……ごめんな!そんでありがとボタン留めてくれて!それとさっき言ってた事もな!」
ニヒヒッと笑いながら一心はコートを羽織り、マスクと革手袋を身につけ飯田の正面に飛び出し
「よし、お待たせ!行こうぜ飯田!」
いつものように満面の笑みを見せた。
しかし、飯田はビクリとも動かない。
「……あれ?飯田?おーい……寝た?」
だがしかし返事はないので……とりあえず一心は
「起きろ!!飯田天哉!!」
とガバッと腕を回してみた
するとビクッ!!と飯田の身体が震えた。
「だ、ダイジョォオオブ!!」
電池が入った玩具のようにやっと動きだした。一心はその反応を笑いながら肩をポンポン叩き「んじゃ、行きますか!」と言いながら更衣室の入口に歩いていく。
飯田はその後ろ姿を見ながら、自分の頭にヘルメットがついてて良かったと思った。
さっきの一心の様に顔が火照りまくっているから……