第17章 忘れられない水曜日 中編
けれど、出久の目は疑いと心配の眼差しだ。出久の観察力の高さを一心はよく分かっている。誤魔化してるのも気が付いてるんだろう……まるで心の奥底も見られているような気がして一心の心臓の音が早くなる。
「そうだ!着替え終わったら先に行ってて!俺まだかかりそうだからさ……ね?」
「……。うん、わかった」
出久は少し戸惑った顔をしながら笑って見せた。それ以上出久は体調について触れる事はなかった。
…………。
数分後……
着替えを終えた皆はゾロゾロと更衣室を後にしていく。
「言葉!お前も早く来いよ」「早く来ねぇと女子のコスチューム目に焼きつける時間無くなるぞ!」「それはお前だけだろ……」
雷、峰田、瀬呂の会話に一心はクスッと笑う。
「おう!もしもバスに遅れたら走って追いかけるよ!」
一心なら余裕だろなと言い笑いながら三人は更衣室を後にした。
更衣室に残ったのは……着替え終わっている飯田のみ
「何だよ〜?待ってくれてんの?委員長が遅れたら大変だろ〜?早く行った方がいいんじゃないのか?」
そう言いながら俺はコスチュームのシャツのボタンを止めるのにまた戸惑っていた。
「委員長だからこそだ。……少しこっちを向くといい」
そう言いながら飯田は一心の横に立つ。疑問を浮かべながら飯田に体を向けると、ゆっくりと一心のシャツのボタンを止めてくれる。
「皆の前でこうすると変にまた心配かけると思ってね。……君は心配されるのはきっとあまり得意じゃないんだろ?」
「………。」
「緑谷君の様に君の気持ちを今は全て察してはあげられないかもしれない……。もしかしたらこうやってやる事も君にとっては余計なお世話かもしれないな……。それでも委員長として……友達として……何か君の支えになりたいんだ。」
「………。」
「………。すまない、本当に嫌だったなら今後はもう少し気を」
その時、飯田は一心の表情の変化に気が付いた。
みるみる顔が火照り耳まで赤くなって行く…
飯田はその表情に身体が固まり視線を動かせなくなっていると一心は口をムグムグと動かし片手で口元をグイッと隠した。
「あ、あんま見んなよ……」