第17章 忘れられない水曜日 中編
「……で?ノートは書き終えたのか?」
「うん!!バッチリ!これで出久にノート返せるし良かった〜……一応出久に報告しとこっかな〜」
言葉は安堵のため息を吐いた。
「…………。」
自分でも大人気ない感情だと思う。なんだか胸がモヤッとしたというかなんというか……
(ふーん、出久……ねぇ……)
今は他の奴の名前を聞きたくないと思った。本当に俺らしくない……。
でも、今だけは……
言葉はスマホをポケットから取り出すため俺の手の中から自分の手をスルッと抜こうとしたが……、俺はキュッと力を込めそれを阻止。
言葉は目をパチパチと動かしキョトンとしている。
俺はニヤッと笑う
「その前に本題の話をしようか」
言葉は頭の中でしばらく考えを巡らせた後、顔がサーッと青ざめた
「や、やっぱり俺除籍にされちゃう?!?!」
俺はニヤッと笑ったまま「さぁ、どうだろなぁ」とはぐらかしてみた。すると、言葉はハワハワと更に慌てだしあれやこれやと俺を説得しようと試みる。
内心可愛いしずっと見てみたいと思うが、素早く除籍にするつもりは無いと白状し、素直に謝った。言葉は安堵しながら冗談交じりに怒ったが、お互いプッと吹き出し笑いあった
言葉が怒らないとわかっていてその優しさに甘えて元々除籍にするつもりも無いのにはぐらかして長引かして……本当に悪い大人だと思う。
……本当に悪い大人だ。
でも、今だけは……俺だけを見てくれないか?
……なんて、な
「……緑谷に報告するんだろ?」
「あ!そうだった!……ってあれ?出久からなんか……。……。あっ!急いで写さなくても写真撮れば良かったのか!普段写真撮りまくってるのに全然気が付かなかった!」
「俺もそう思ってたが」
「えぇええ!!言ってよ〜相澤先生〜俺頑張ったのに…」
「遅かれ早かれ写すんだ。やれる時にやっとけばいいだろ。でもまぁ、お疲れ様」
俺がそう言うと言葉は満足そうにニマッと笑った。
「そろそろ教室戻っとけ次の授業遅れるなよ」
「は〜い!」
「それと、体調悪くなったら直ぐに言えよ」
そう言うと言葉の笑顔が少しぎこちなくなったが、直ぐにいつものように笑い「ちゃんと言うよ」と言いながら荷物をまとめ職員室から出て行く
……。俺は今これだけしか言ってやれないのかと思うともどかしかった