第17章 忘れられない水曜日 中編
『イレイザーヘッド……本音を言えないって辛いね。あんたがどれだけ言葉の事を大切に思ってるか痛いほどわかる。【心配だ】と言えば、言葉の事だからいざと言う時にそれがストッパーになって判断が遅くなるかもしれない……。だから言わないんだろ?
私はね……言葉の事も心配だけど、イレイザーヘッド……あんたの事も同じぐらい心配だよ。
今でこれじゃあいつか自分の心に抑し殺されるんじゃないかってね。プレゼントマイクもきっと同じ事を思ってるんじゃないかい?
……。……あの子なら大丈夫、茨の道でも乗り越えられるよ、あの子は強い子だ。そうだろ?イレイザーヘッド』
「…………。」
(………。分かってる、言葉なら上手くやれる。きっとな……どんなに傷付いても最終的には上手くやってくれるだろう。けど、俺は……【あの夜】が頭から離れない……。
……またあんな事があったら?言葉……お前は耐えれるのか?本当に?また壊れるんじゃないか?また全てを……。なら一層……俺は……もうお前に……)
頭に黒い渦がどんどんと生まれる中、俺の両頬に暖かい手が触れた。ハッ!と我に返り、いつの間にか下に行っていた視線を戻すと不安そうな顔の言葉と目が合った。少し瞳が潤んでいる……
「……大丈夫?話しかけても反応無くて……イレイザーヘッド……なんか、苦しそうだった…すげぇ……苦しそうだったから……」
泣きそうになる言葉を思わず抱きしめて撫でくりまわしたいと思い腕を伸ばそうとするが、ここは学校だしそろそろ誰か戻ってくるかもしれない…と自分を抑え込み。
「悪い、不安にさせたな。俺なら大丈夫ありがとね。それと学校では相澤先生な」
軽く頭を撫でてやると、さっきの泣きそうな顔はどこへやら言葉はニヒッと笑ってコクッと頷いて見せた。俺の目の前で……
「スゥゥゥゥゥゥゥゥ……」
風船から空気が抜けるように息を吐き出し、この感情をどうにか処理しようと試みるも未だに暖かい言葉の両手が自分の頬に触れているため上手く処理しきれない……しかも、親指が頬を撫でるようにスリッと動かしてくる……
(クッッッ!ここが学校で良かったな……)
荒ぶる感情を抑え込み、あくまで表は冷静を装いつつ言葉の両手に自分の手を重ねゆっくりと引き剥がす。……正直名残惜しいが、このまま耐えれる自信もない。