第16章 忘れられない水曜日 前編
上鳴の発言に想像を膨らませ少し口角が上がる。
「……いいなぁ、それ」
俺はあの女性を思い出しながらそう呟くと、ふと皆が固まっていることに気が付いた。
「……あれ?みんなどうしたんだ?」
「言葉……やっぱりお前は男だもんな!!ボインの姉ちゃんに興味あるよな!!いやぁ〜!オイラはそれが聞けて安心したぜぇ〜!」
「……。……ん?」
(なんの話しだ?)
「……。やっぱりある方がいいんだ」
「え?」
(なんで耳郎落ち込んでるんだ?)
俺がキョロキョロとしていると、瀬呂がニヤニヤと笑いながら口を開く
「もしかして言葉考え事してて聞いてなかった感じ?上鳴が恩返しに来たりしてって言った後、峰田が『そんときゃ…ボインの姉ちゃんになってたりして…言葉直ぐにオイラに連絡寄越せよな!!』ってさ、そんでそのあと言葉が『……いいなぁ、それ』って」
「あ〜〜なるほど……。瀬呂の言う通り全然峰田の聞こえてなかったよ……本当に猫が恩返しに来てくれて元気な顔見せてくれたらなぁって考えてた」
俺はタハハ……と笑うと、峰田と瀬呂を除くみんなからホッと安堵のため息が漏れた。
「……んで?結局どうなんだよ……ボインの姉ちゃん……お前も男なんだから興味あんだろ?なぁ……楽になっちまえよ……」
峰田は悪い顔をしながら口に手を置いてヒソヒソ話をするかのように俺に聞いてくる。
俺がうーん…と考え込んでいると、突然横からズイッとノートが割り込んできた。
キョトンとしていると、ノートの持ち主の出久が切羽詰まったようにズズイッと会話に割り込んできた。
「一心君はそんなの興味無いよね?!ね?!ね?!?!ね?!?!?!」ズズズイッ!
「圧がすんごいな出久!!そんなに圧力かけなくても俺は元々そういうの興味あるかないか自分でもよくわかんねぇから」
「……本当?」
「本当本当!」
俺がそう言うと出久は身体中の空気を抜くように大きな息を吐き出した。
話を聞いていた峰田は膝から崩れ落ちた
「クソォオオ!!なんでだよ!!せめてムッツリスケベであれよ!!釣り合わねぇだろ色々と!!俺は認めねぇ!!高校生にもなりゃ男全員興味ある一択なんだよ!!なぁんだ興味あるかねぇかわからねぇって!!あれよ!!興味!!あれよ!!
絶対!!!!オイラは!!認めねぇ!!!!お前の隠してる性癖ぜってぇ暴いてやらぁ!!」