第16章 忘れられない水曜日 前編
廊下で制服を整えながら早足に教室に向かう。個性を発動し自分の身体に怪我がないか確認をする。
(目の腫れもよし、頬の腫れもよし…後は手のガーゼを取れば大丈夫かな)
リカバリーガールに言われた通り手のガーゼを取ると、傷は綺麗さっぱり消えていた。
(俺の身体寝てる時は治癒力が凄い活性化するのはいいんだけど……その分睡眠時間をいつもより大幅に取っちゃうからなぁ…あとお腹も減る…)
グゥ〜…と鳴るお腹にタハハ…と笑いながら教室に到着。まだ二限目終わるまで十分ほどあるので個性で気配を消しながら音を殺しまくり中に入る。
現代文担当のセメントスは黒板から教科書に視線を移そうとした所で俺に気が付いたようで身体を少しビクッとしながら俺を二度見した。
そんなセメントスに笑いが出そうになるけど必死に我慢しペコッと軽く俺は頭を下げた。するとニコッと笑い頷くセメントス。
そんなセメントスの様子を見ていた皆はなんだろうと思ったのか数人を除き振り返り始め、いつの間にか教室に入っていた俺にギョッと目を丸くさせ驚きの声を出した。
(あちゃ〜…授業の邪魔しないようにしたかったんだけど…)
俺は申し訳なさそうに笑う。
「えっと〜…みんなごめん授業の邪魔して!俺に気にせず続けて!」
俺がそう言うと皆プッと吹き出し、優しく笑ってくれた。
「皆、言葉君と話したいだろうけれどあと十分頑張ろう」
セメントスの言葉に皆はまた授業に集中してくれたので、俺はホッとしながら席に座る。常闇から視線を感じ見てみるとフッと笑い頷いてくれた。
多分、元気そうで良かったということだろうと俺はそう解釈しニッと笑って口パクでありがとうと告げると常闇はまた頷き授業に集中し始めた。
…………。
十分後…二限目終了、そして十分の休憩時間
ゾロゾロと俺の席に数人集まってきてくれた。
「言葉さんもう大丈夫なんですか?身体や顔を強くぶつけたと伺ったのですが……」
「おう!この通り全然大丈夫!心配してくれてありがとう八百万!みんなもありがとう!」
「猫の為に体張るなんて漢じゃねぇか言葉!!」
「そのうち猫の恩返しに来るんじゃね?!」
「恩返し…か…」
(もう一度会えたら安否確認も出来るし俺も安心出来るのにな……あの人、あれからどうしてるのかな?本当に約束守ってくれるかも分からないし……心配だ)