第16章 忘れられない水曜日 前編
俺はプレゼントマイクの顔を見ていつも通り笑いかける。
「タハハ......いやぁ〜実はさ!道の角から猫が飛び出してきて当たりそうになったから勢いよくハンドル切ったんだ〜......猫には当たらなかったけどバランス崩しちゃって......こんな事に......でもでも!!猫に当たらなくて本当に良かった!!って事で今から保健室に行って見てもらうところ!!」
それじゃ!と言いつつ保健室に向かおうとするものの一向にプレゼントマイクは離してくれない。
「嘘付くなよ言葉。【大丈夫】......じゃないんだろ?」
心の奥にズッと入り込むプレゼントマイクの言葉に俺は今朝あった事を言いたくなるけれど......ギュッと我慢をする。
「アハハ!嘘じゃないよ!大丈夫だよ、全然平気!って早くしないと授業間に合わなくなるだろ〜」
腕にさっきより力を込めるもプレゼントマイクは離してくれない。ズズッと嫌な感情がドロドロと溢れる。
(......お願い離してプレゼントマイク!!)
「誰かに言うなって言われたのか」
その言葉に俺は身体をビクッと震わせ目を丸くする。ドクドクと心臓が早くなる。
(あぁ、ダメだ......ダメだダメだダメだ!!
......ッごめん!!!)
俺は目をギュッと閉じ力任せに腕を振りほどくと息をこれでもかと吸い込んだ。
「違うッ!!!猫に当たりそうになっただけだって言ってるだろ!!!」
俺は自分でも怖いと思うほどの怒鳴り声を出した。ギュッと閉じた目を開けてプレゼントマイクを見てみると、俺の声にビックリしてか目を丸くさせている。
俺は頭が徐々に冷静になると共に自分が肩で息をする程に声を荒らげたんだと理解し、罪悪感でサァッと血の気が引いた。
(初めてプレゼントマイクにこんなに怒鳴った。こんな事したくなかったのに...なんで、大好きなプレゼントマイクに俺......なんて事したんだろ....心配してくれただけなのに......謝らなきゃ...)
「......あ、......ごめ.....なさ.....俺.....」
ボロボロと涙が溢れて上手く謝れない
変な事を考える俺、イライラする俺、言いたくないことを言った俺、大切な人に酷い言い方をする俺、上手く謝れない俺......自分なのに自分じゃないような感覚に身体が震える