第16章 忘れられない水曜日 前編
一心side
制服に着替え学校に行く身支度を終えた俺は洗面所でバシャバシャと顔を洗い胸騒ぎで集中出来ない気持ちを整える。タオルで顔を拭いたあと、更に気合い注入とばかりに両頬をペシペシッと叩く。
「ッよし!!大丈夫大丈夫!!」
鏡の自分に満面の笑みを浮かべながら、今日も少し早く家を出た。
……………。
大切でお気に入りの自転車を漕ぎながらいつもと変わらない通学路を通り、今日も困ってる人がいないか少しパトロール気分で登校。
(今日も平和だな〜……困ってる人もいなさそうだしちょっと学校に早くつくかなぁ……)
そんな事を考えていると、突然道の角から髪の長い女性が勢いよく飛び出し自転車の進路を塞ぐ
「ッ!!」
(ダメだ!!今ブレーキをかけてもぶつかる!!!)
俺はハンドルを勢いよく切り、女性にぶつからなくて済んだもののバランスを崩し派手に転倒した。
(あっっぶねぇ〜〜!あの人に当たらなくて良かった〜!!)
ドッドッドッと早まる心臓を落ち着かせ俺はビックリしてか微動だに動かず俯いたままの女性に近付こうと立ち上がると、手にピリッとした痛みがある事に気がつく
見てみると手を大きく擦りむき血がジワジワと滲み出ていた。
俺はその手をサッと後ろに隠し女性に近付く
「すみません!怪我はないですか?!」
話しかけても無言の女性......そんな女性に違和感を感じる
(......?なんだろうこの人......こんなに近くにいるのに人の気配を感じない.....それとぶつかる瞬間チラッと見えたけど何か持ってたな)
もう一度話しかけようとした所で女性は俺の右肩をガシッと痛いほどに掴んできた。訳が分からないけれど、振り払う事も出来ず俺はただただ女性の次の行動を待った。
女性はゆっくりゆっくり顔を上げる。
俺は彼女の表情に目を丸くした。
酷く怯えた表情、目は充血し涙の跡、口をガチガチと震わせている......そして首にはチカチカと光る首輪が付けられていた。
これはただ事じゃない事を察した俺はスマホをポケットから取り出そうとするも
「誰にも連絡しないで!!!殺される!!!」
と荒らげた声で女性に言われ、スマホを取り出すのを辞める。