第14章 一心の自由気ままな一日
ーーーーーーーー
一心side
時間を少し遡り…心操と別れた後の事
「はぁ…はぁ……ッ!」
俺は痛む右腕を左手で抑えながら保健室に向かっていた。
(心操には嘘ついたし、置いてきちゃったし…本当にごめん…)
心の中で謝っても心操に伝わりやしないのに俺はため息を吐きながらそう思った。
(心操の言った通りだ…俺は右手や腕を庇ってた。
本当によく見てるやつは見てるというかさ…まさか気が付かれると思わなかった。
本当…驚きすぎて言葉が出なかったよ)
痛みで笑っていられないはずなのにフッと自然と笑みがこぼれた。
(心操の個性を解除するためだけにこれほどの副作用があるって事はそれほど心操の個性は強力ってことだ…
本当…カッコイイ個性だな…
試験内容が違ってたら今頃絶対ヒーロー科に居たんだろな…)
「…グッ!」
俺は思わず痛みでその場にしゃがみ込んだ。
「…ッ!! い…たくない……いたく……ない…平気だ…痛くない痛くない痛くない…ッ!
ヴッ!ッゲホゲホ!」
焼ける様に痛む右腕をギュッと握りしめそう言いながら個性を発動させると少し痛みはましになったものの次はその個性を発動させた副作用として血が混じった咳をする
俺は左手で口についた血を拭うと再び立ち上がり、保健室を目指す。
(話ながら思ってたけど心操はやっぱりイレイザーヘッドと似てる雰囲気がある。
…だから心操の隣に居るとすげぇ安心したんだよなぁ…匂いは覚えたから今度クラスに行って誘いに行こうかなぁ…迷惑かな…)
額にジワジワと汗を滲ませながらそんな事を考える。
楽しい事を考えると痛みがまた少しだけましになった気がした。
ヨロヨロとしながらもなんとか保健室の前に到着…
一呼吸し平然を装いコンコンッとノックしてから引き戸を開けると、リカバリーガールがいつもの椅子に座っていた。
「おや誰かと思えば…、……。」
俺の顔を見て優しく微笑むリカバリーガールだったけれど直ぐに呆れたような真剣な表情に変わる。
「いやぁ〜、ちょっと副作用で右腕が…」
タハハと笑うもののリカバリーガールは全てお見通しみたいだ。
「ふぅ…相変わらずあんたは作り笑いが下手だね…
まぁ、言いたいことも聞きたいことも沢山あるけど治療が先…上着脱いでそこの椅子に座りな」
「…ハイ」
(……。リカバリーガールちょっと怒ってる)