第14章 一心の自由気ままな一日
………………。
一心はペンを素早く動かしながら一枚…二枚…三枚…と丁寧に書き上げる。それを横目でジーッと見る心操
(なんか凄い丁寧に書いてるなぁ…良く見えないけど……。早く見たい一心のサイン…)
ソワソワとする心を抑えながら待っていると、一心は少し不満げな顔をする
「ん〜…?ちょっとミスったなぁ…悪いけどもう一枚貰ってもいいか?」
「別に良いけど」
(むしろ何枚でも…!)
一心はありがとうと言いながらまた白紙の紙に一から書いていく。今度はペンの動きをゆっくりと…
「なぁ、心操が良ければだけどさ…連絡交換しね?」
「ッ!!あ、あぁ…別にいいけど」
(マジ?!良いの?!俺なんかと交換して良いの?!やっっった!!)
心操の心の中では喜びで舞い上がっているものの顔に出さないように我慢をする
が
直ぐに心が静まった。
(…いや、それじゃダメだ)
「…ごめん、やっぱり…交換は出来ない……今は」
途切れ途切れに言う心操の顔は少し暗く、そんな横顔をチラッと見ては直ぐに視線を紙に戻した。
「そっか!んじゃ諦める!」
「……ごめん」
明るいトーンで言う一心とは裏腹に心操は申し訳なさそうに暗いトーンで話す。
少しの沈黙の後、心操はゆっくりと口を開いた。
「今は交換出来ない……けど……
…俺が……
俺があんたと同じ土俵に立ったその時に…
……ッ
その時に交換してくれませんか……!?」
両手に力を入れながら、一心の顔をしっかりと見て解き放った言葉に一心は目を丸くさた。
そしてキラキラと目を輝かせ満面の笑みで笑う
(太”陽”の”様”な”笑”顔”)
そんな笑顔に心操の鼓動は大きく高鳴り直視出来なくなったため顔をずらす。
が
ポンッと心操の頭に一心の手が優しく乗っかり撫でられる。
「ッ?!?!?!」
石の様に固まった心操の身体からは一気に体温が爆発的に上がった。
「んじゃ、その時を楽しみにしてるからな!
また一緒にお昼食べようぜ」
そう言いながら一心の手が頭から離れた
心操が視線を一心の方に向けたが、そこに一心の姿はなく荷物もあたかたもなく消え去り、まるで初めから誰もいなかった様だ
「…一心?」
今までの事は幻だったのかとポカーンとする心操のすぐ隣にはペンと紙が置かれていた。