第14章 一心の自由気ままな一日
「……!……かっちゃん…」
出久が小さくそう呟いた。
「……チッ」
勝己は出久を見た瞬間あからさまイラつきを表に出し始める。
俺は出久を背中に隠すようにしながら勝己に笑いかける。
「おはよう『勝己』!」
そう言うと勝己の怒りがスッと抜けるように無くなるのを感じた。
俺の前に立った勝己はカバンをゴソゴソと弄り、紙袋をズイッと押し付けてきた。
「…お?ありがとう!」
「ババアからの土産…それと手土産美味かった、礼言っとけってよ」
「…!!ちゃんと渡してくれたんだな!ありがとう『勝己』!それとこれもありがとうって言っといてくれ!それとババアはダメだぞ!」
「チッ…指図すんなボケ!」
そう言いながら勝己は教室に入っていった。
「「……………。」」
(なんだろ…背中から怒りの感じがヒシヒシと伝わってくるんだけど…俺の背後に居るのって出久だよね?そうだよね?え?なんで怒ってるんだろ?どうしよう…分からない…滅茶苦茶怖いんだけど…昨日の三人を思い出すんだけど…俺また質問攻めされるのかな…)
そんな事をグルグルと考えていると出久がゆっくりと喋りだした。
「ねぇ…なんでかっちゃんの事名前呼びになったの?遊びに言ってそんなに仲良くなったんだ……へ〜…」
チラッと目線を出久の方に向けるもすぐさま目を逸らす…
「あ、えっと…」
(ヤバい!!いつもの出久じゃない!?目がこっっわ!!一切笑ってない!?なんで?!名前呼びそんなにNGだった?!かっちゃん呼びに変えた方がいいの?!俺もかっちゃんて呼ぼうかなぁ?!)
頭の中がグルグルと回る
「どうしたの?早く教室に入ろうよ一心君」
「あ、そう…だね…」
(なんだろ…嫌な予感が凄いする…)
そんな事を考えながら教室に入る事を躊躇っていると出久に腕を強引に引っ張られる。そのまま教室の中に入ると出久は俺の腕を離さずにズンズンとマイトの話をしているクラスメイトの方へ歩いていく
「ちょ、出久?!」
小声でそう言うも腕を離す事は無く、
「僕も昨日の新曲聞いたんだ!どれも良かったよね!
…一心君もそう思うよね?」
「ア…ウン」
俺はどうやら相当な出久の地雷を踏んでしまったらしい…
(ア〜、ハヤクソトデ…オヒル…タベタイナァ…)
俺は考えるのをやめ密かに覚悟を決めたのだった…