第3章 #03 枯渇
雨ってなんでも流してくれるじゃない
心の奥の黒い固まりも
でもどうしてだろうね
これだけは消えないの
どうしてか消えない、この喪失感だけは
あなたが消えてから時々あなたがいるような錯覚を起こすの
ほんの一瞬だけあなたが見える
あの大雨の日
傘もささずに、あなたを追いかけた
白いワンピースが茶色く汚れるのだって気にせずに
でも1回もあなたは振り向かずに
行ってしまったの
あの日のことだけは雨は流してくれない
まだ、私のここに残る
ああ、その声も、顔も思い出せるのに
どうして抱きしめられないの