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【短編集】切ない恋もそこまでに

第16章 #16 痛みと傷


『お前、怪我しすぎじゃないか?』

3週間余りが経った頃、女の体には見えないところも合わせて20箇所以上の傷があった



「ドジなのよ」

『昔はこんなじゃ無かっただろ』

「人って簡単に変わるのよ」

『…後で部屋に来い、傷を見る』

「それならルナに見てもらうわ」

『あいつは医療知識なんてねぇだろ』

「応急処置くらいできるでしょう?」



ああ言えばこう言う、そんな女に痺れを切らして腕を掴んだ男



「なに、離して」

『何か隠してるのか』

「…」

『言え』

「私はあなたの部下だけれども、プライベートまで知られる義務なんて無い」

「あなただってプライベートは言わないでしょ?」


あなたは特に、プライベートにズカズカ踏み込まれるのは癪に障るでしょ

自分から話すことない、聞かれても言いたくないことは絶対言わない


『それとこれは別だ』

「どう別なのよ」

「隠し事のひとつやふたつ、構わないでしょ?」

『こうもうちの部下が傷ついてちゃ困る』

「応急処置はするわよ」

『それを俺がすると言ってる』

「痛い、離して」


会話がヒートアップしていくうちに、握る手の強さも強くなっていた


『…悪ぃ』

「隠し事があるほど女は魅力的なのよ」


そう言って男の目を見て口に人差し指を立てた


両腕、お腹、両足にある切り傷

まるで見せつけるかのような傷


『………』

『狂気的……だろ』


異常な程までの切り傷は、見たものにぞっ、とした印象を与えるほどであった


でもそれが女にとって、唯一酔えるモノだったから。
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