第2章 #02 届かない
窓に打ち付ける雨が、君の泣き声に被さる
いつまでこうしてるだろうか
僕はずっと君の頭を撫で続けている
目の周りも、鼻も赤くなってくしゃっと潰れるその顔
時々紡ぐ言葉もしゃくりで上手く聞き取れない
僕の言葉は届かなくて
ただ君の声だけが響いて
君は立ち上がってよろよろした足取りでどこかへ向かう
クローゼットを開け、綺麗にアイロンがけされているシャツに手を伸ばす
シワがつくのも気にせずぎゅっと抱きしめていた
そこにあったものを思い出し、体で感じるように
そっと、強く、抱きしめていた
僕の手は透明で、君に届かないんだ
どれだけ伸ばしても君の涙は拭えない
部屋には君の泣き叫ぶ声だけが響いた