• テキストサイズ

オニオンスープ

第3章 2杯目


 『2杯目』

 今日はもすとろらうんじで、バイトだ。

 全くもって、発音しにくい。
 そもそも、おくたびれる?おくたびーる?寮名が言いにくい。
 オクタでいい。
 オタクみたいだけど。

 そう思いながら混ぜるのは、賄いのオニオンスープ。
 グリムは今日も、エーデュース達に任せてきた。
 …帰りに、ツナ缶でも買って行ってあげよう。

 「監督生さん、そろそろ言えるようになりましたか?」

 そっと忍び寄ってきたのは、海のギャング、ウツボの人魚の片割れ先輩。

 「奥多摩川のモスとららら」
 「おやおや」

 どうせ、燃費の悪い先輩のことだから、味見でもしに来たんだろう。

 「はぁ…、おくたびれるの!もふ、」
 「オクタヴィネル寮のモストロラウンジです」
 「揶揄いにきたんですね、悪趣味です。もう、今日の賄いアナゴにしちゃおうかな」
 「おやおや」
 「オクタのカフェでいいです」
 「ムキになるあなたも、可愛らしい」

 ぐいっと身長をかがめて、にっこりと笑う。
 顔がいいだけに、心臓に悪い。
 サラッとした髪も、見た目の爽やかさだけで言ったら少女漫画だ。

 「捕食されるの、勘弁ですから!」
 「ボクはそんなつもりないのに、悲しいです」
 「先輩と話すの疲れます。揶揄わないで、山の話でもしててくださいよ」
 「山を愛する会に興味が?」
 「てらるーむ?なら、興味ありますけど」
 「テラリウムです。ならば、今度一緒にどうです?」
 「それなら、是非!しかたないので、賄い1番にあげます」

 テラなんとか、作ったら会話のきっかけになりそうだし。
 写真撮ったら、イイネしてくれそうだし。

 ちょろい私の、不純な動機。

 何も知らない先輩は、嬉しそうにしてる。

 スープの方に対しての、かもしれないけど。
 だってほら、ぐうってお腹が鳴ってる。

 「一杯いただいても?」

 うなづいてカップに注いで差し出せば、大食らいには見えないほど上品に飲み干した。

 「ええ。コンソメが効いていて、とてもおいしいです。キノコにも合いそうですね」
 「舞茸とか入れても確かに美味しいですよね」
 「さすが、監督生さん。分かってますね。次はキノコ入れてください」
 「いいですけど…フロイド先輩のこと、説得しといてくださいね」
 「おやおや。手厳しい」
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp