第2章 1杯目
じーっとした視線に気づいて、にっこりと笑って返す。
「先輩が買ってくれたから、余計美味しく感じます」
「そっか」
先輩の、ピアスが光る。
「エーデュース達のお陰で、先輩にも会えたし」
「…」
「クルエール先生に掃除頼まれて、ラッキーでした」
そういうと、優しく頭を撫でられた。
「先輩、」
もう一度ありがとうと言うために、先輩の方をむこうとするとヒュンと現れたリリア先輩。
「みーつけた、じゃ。くしししっ」
「うわ!!り、りあせんぱい?!」
「いかにも。ケイト、鬼交代したんじゃ」
「えぇ?!早くない?」
「サボってないで、行くぞ!監督生も参加するじゃろ?」
にっこり悪戯に笑われたら、断るわけにもいかなくなる。
「望むところです!ね、ケイト先輩」
「えー、マジかぁ」
といいつつ、グビッと飲み干したコーヒー。
空になった缶を先輩は、軽く弧を描いて投げてみせた。
ダストボックスに、それが吸い込まれるようにして入っていく。
「ナイスじゃ、ケイト!!」
「すごいです、先輩!」
満更でもないくせに、たまたまだと言う先輩。
「んじゃ、行こうか。2人とも」
「はいっ」
「うむっ」
先輩のこういう、何気ない仕草が好き。
ノリの良さも、
みんなと仲良くなれるところも、
私にはキラキラして見える。
「おーい!2人ともどこ行ってたんだぁ?」
「ケイト、サボっておったんじゃ」
「ごめんごめん」
「監督生も来たのか!いいなぁ、賑やかで!早くやろうぜ!次はオレが鬼だ!!」
「オッケー!じゃあ、いっくよ!!
【スプリット・カード!!】」
ポンポンと生まれたケイト先輩の分身と共に逃げ出す。
「十数えたらスタートね!」
「いいぞ!よーし、いーち、にー!」
カリム先輩の声が聞こえる。
ぐいっ!
「けいっ」
シーッと、長い人差し指が唇に触れる。
「監督生ちゃん、一緒に逃げよ?」
パチンと一つケイト先輩がウインクする。
「はいっ!」
その仕草一つで今日も、私は先輩に落ちて。
あと何回すきになったら、先輩のもっと深いところに堕ちることができるんだろう。
なんて、
そんなことを思いながら、先輩の背中を追うの。