第11章 10杯目
「いや、来るだろ」
「俺をなんだと思ってる」
「レオナ先輩としか思ってないですけど、で、どうしたんです?」
「今から寮長会議なんだよ、その前に一眠りしようと思ってたら、枕がなんか喋ってんなって思ってな」
「だって、エース。頑張れ」
エースを生贄に差し出す。
「いや、どう考えてもお前」
「ヤローの膝に寝たくねぇよ、馬鹿」
「新しい扉開くかもしれませんよ?」
「開かねぇよ。黙ってその膝差し出せ」
「いや、会議行ってくださいよ。オフられますよ?」
「バーカ、そんなん砂に変えて」
「レオナ先輩、こんなところに居たんですね?」
「ち、」
「君たちすまない、レオナ先輩は今から会議で」
「どーぞ、どーぞ。リドル先輩、連れ帰っちゃってください、この人サボろうとしてたんで」
「お前…あとでみてろよ」
リドル先輩にひきづられながら、渋々教室を出て行ったレオナ先輩に手を振って送り出した。
「一件落着みたいな顔してるけど、お前、オレを売ろうとするとかひっでぇの」
「ごめんって、エース」
「明日の昼飯」
「無理、今金欠」
「お前こっち来てからずっとじゃん」
「なんかデジャブ。今日のおやつで我慢してよ、ホットケーキミックスあったはずだから、何か作ってあげる」
「パウンドケーキ、ジャムのったやつ」
「あぁ、さくらんぼの?了解。っていうか、トレイ先輩に頼めばいいのに」
「お前のがいいの、早く帰ろうぜ。オンボロ寮に」
「ちゃんと届け出しときなよ?」
「泊まっていーの?」
「え?まぁいいけど、部屋余ってるし。デュースも呼んで、お泊まり会する?」
「いいな、それ!」
「食材頼むね?」
「ちゃっかりしてんな」
「作るのは私」
「仕方ねぇな、それよりさ」
機嫌良く、カバンを肩に下げたエース。
「うん?」
「さっきのファーストキスの話」
「って、それは終わった話で」
「ピンっときちゃったんだけど、言ってもいいか?」
「だめ」
「レオナ先輩だろ、相手」
「…」
「やっぱりな」
「馬鹿エース」
「仕方ないだろ、知ってないと…いざって言う時守ってやれない」
「何から守ってくれるの?」
「んー、お前を脅かすもの、とか?」
「今エースが脅かしてるんだけど」
「はは、まぁ。たしかに」