• テキストサイズ

オニオンスープ

第11章 10杯目


 「いまいち確信付かないと言うか…」
 「どうして?」
 「遊ばれてるのかなって、先輩も言葉はくれないし」

 ため息をつかれて、しまう。

 「それに…」
 「なに」
 「…ス、」
 「は?」
 「…なくなっちゃったし」
 「ファーストキス?!!」

 エースの口を思いっきり押さえる。

 「もごっ、って、やめろよ」

 男の子の力に敵うはずもなく、容赦なく外されたけど。

 「誰にだよ」
 「誰にって、」

 レオナ先輩の悲しげな顔が浮かぶ。
 あんな顔するくらいならしなきゃ良かったのに。

 「事故みたいなもので、でも、私にしたら初めてだったから。
 …って、こんな話聞きたくないよな。ごめんね」
 「謝るなら、最初っからすんなって」
 「うん」
 「ま、別に。俺はいいんだけどさ、どんな話聞いたって受け止めてやるし」

 ポンポンと宥めるように、さすられる。

 「つーかさ、事故なら良くない?ノーカンでしょ」
 「…」
 「苦虫潰したみたいな顔してるし」
 「虫食べたくないし」
 「そんな話してねぇよ。なんなら、俺として上書きしてやろうか?」

 ばっと唇を抑える。

 「…ばーか、しねぇよ」
 「えーすは、ダメ」

 顔を見れずに言葉を繋げる。

 「エースとは、絶対やだ。
 だめ」
 「そんなあからさまに言われたら、さすがの俺も傷つく」
 「ごめん!そういう、意味じゃなくて…えっと、」

 視線を向ければ、エースの不貞腐れた顔。

 「この世界に来て、すごくお世話になってて、マブで、大好きで、一生忘れたくない親友で、1番の味方って勝手に思ってるから」
 「…」
 「エースとキスして、関係が壊れて全部無くなったら、私はたぶんこの場所で息できなくなっちゃう。
 だから、エースとデュースとは、絶対そういう事になりたくない」
 「…ばーか、たとえデュースであれ、こういう時は他の男の名前出すな」
 「ごめん?」
 「それに、キスくらいで、マジにすんなよ。からかっただけだっつーの。
 当たり前だろ、俺は…俺たちはお前の1番の味方だから。
 簡単に傷つけたりしねぇよ」

 エースは優しい。
 その眼差しも、言葉も。
 私には、勿体無いくらいの優しさをいつも、惜しみなく分けてくれる。

 「ありがと、」
 「つーか、グリムは?」
 「なにが?」
 「キスしてもいーのかよ」
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp