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オニオンスープ

第11章 10杯目


 『10杯目』

 レオナ先輩が見つけて届けてくれた口紅。
 ケイト先輩がくれた口紅。

 自分では似合う気がしなくて、
 自信がなくて、
 つける勇気もないくせに、

 無くしたくなくて、

 そっとポケットにしまってある。

 先生が黒板に写した字を、私は必死に写す。

 「いつになく真剣だな」

 先生の目を盗んで言ってくる、隣に座るエース。

 わからなくていい。
 これは、私だけの秘密。

 占星術につながる、科目。

 初めてスープを共有した日、教えてくれた事。

 私はあの日からずっと、ずーっと、
 気持ちを自覚する前から、先輩の得意な科目を意識してて。

 ケイト先輩に近づきたくて、必死で。

 何もなくても話題のきっかけになるんじゃないかって。

 「なぁ、ここちがうぞ」

 器用なエースは、時々できるフリをして私に言ってくる。
 間違いを指摘してくる。

 できるフリじゃない、

 「うそ」
 「ここ、」

 指を刺した位置に目をやれば、なるほど、確かにスペルを間違ってる。

 エースはよく見てる。

 「エース、エースってさ」
 「なんだよ?」

 ちょうど良く鳴ってしまったチャイム。

 挨拶を終えて、また席に着く。

 「なんだよ?」
 「前にさ、イソギンチャク事件あったでしょ」
 「やめろよ、思い出したくもない」

 うげーって、顔をする。

 「テスト、エースが本気だしたら、いい点取れるんじゃないの?」

 次の科目の教科書をだしながら、問う。

 「…何を言い出すかと思えば」
 「いっつも、ギリギリじゃん」
 「赤じゃないからいーんだよ」
 「ふーん」
 「興味ねーだろ、お前」
 「ううん、あるよ。いいなって思って」
 「何が?」
 「エースは魔法も使えて、器用で、頭も良くて…」

 言い出しといて、少し情けなくなる。

 「なに、またナイーブになってんの?」
 「先輩に付け入る事簡単にできそうで羨ましい」
 「うげぇ…。ナイーブの方向性の違い」
 「仕方ないじゃん、そんなこと言ったって」
 「いい加減、告ればいいじゃん」

 興味がないように言ってくるから、尚更だ。
 まぁ、マブの恋愛模様とか聞きたくないよね、男の子だしね。

 「リップだって貰ったんだろ?見つかってよかったじゃん」
 「うん」
 「何をそんなに自信がないわけ」
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