第2章 1杯目
「ふふ、顔赤くなってる。耳まで」
頬を触っていた先輩の指によってかけられた、右サイドの髪。
ケイト先輩の唇が、耳に近づく。
「かわいいね、食べちゃいたいくらい」
「アウトー!!!オレくんぜっったい、アウトだから!!」
パチンと指が鳴って、またまたハラッと落ちたトランプ。
「なに?!どう言うこと??」
ぐいっと肩をつかまれる。息を切らしたケイト先輩。
「ごめんね!?オレくん達に何もされなかった!?」
「まぁ、はい、」
「はぁ、よかったぁ」
ヘナヘナと座り込んだ先輩に合わせて、私もしゃがむ。
「ケイト先輩、どうしたんですか」
「今ね、カリムくんの提案で学園内隠れんぼしててさぁ」
まさかの言葉に聞き返すことすらできない。
「知ってのとおり軽音部って言っても3人しか居ないから、オレくん達も使ってしてたんだけど、さっきの2人以外全員捕まえたのに戻ってこないからさぁ、まさかこっちに来てたなんて」
「なるほど、だからさっき詠唱が聞こえたんですね」
「うん。全く油断もスキもあったもんじゃない」
「本人なのにね」
「全くだよ。まぁ、オレはまだ学生だからねぇ、コントロール効かないのも勉強不足ってことかなぁ」
「ふふ」
「安心したら、喉乾いた!なんか飲まない?けーくんが奢ってあげちゃう。行こ?」
カード達とは違って強引さはなく、スッと差し出された先輩の形のいい指が私に向けられる。
「はいっ」
…掃除、2回も頑張ったご褒美かな。
向けられた先輩の笑顔に思ったりする。
「先輩、隠れんぼよかったんですか?」
「うん、探すの疲れちゃったし。違うオレ君に頼んだから。
おサボりしちゃお。リリア君と、カリム君には内緒…ね?」
「はいっ」
ーーーーー
ーーー
ーー
たどり着いた自販機。
「どれがいい?」
その時、先輩の髪が優しく揺れたから。
「オレンジジュース、」
「ん」
先輩は慣れたようにオレンジジュースと、ブラックコーヒーのボタンを押し、ケータイで決済する。
「どーぞ」
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
近くにあったベンチで乾杯。
「先輩、コーヒー飲めるんですか?」
「うん、たまに、飲みたくなるんだよね」
たまに触ることを許される、先輩のナカの部分。