第10章 9杯目
レオナさんこそ、余計なこと気にしなきゃいいのに。
「いつものアンタ何処置いて来たんすか」
がめつく、奪ってやればいいのに。
そして、
そんな目障りなもの砂に変えちゃえばいいんだ。
「バーカ。
お前にお膳立てしてもらわなくても、俺はどうにだってできんだよ。
それとも何か?
お前程度にお膳立てしてもらわねぇといけねぇほど、頼りねぇ王様に見えんのか?俺が」
凄んで言ったって、今のレオナさんは頼りねぇよ。
そんな寂しそうに、
切なそうに、
自分の好きな相手に贈られた
他の男からのプレゼントにまで優しくするなんて。
「はいはい分かりましたよ、勝手してすみません」
レオナさんが勝手に納得したって、
俺が納得できないんだってば。
聞き分けのいいふりをするのは、オレも一緒か。
「けどそれ、オレにはもう必要ないんで。
レオナさんにあげますね」
渡すのか、
壊すのか、
きっかけは作ったんだから、あとはボスの好きにすれば良い。
「面倒なもん押し付けやがって」
どっちが。
「なんか言ったか?」
「何でもねぇーっすよ。美味いの作ってくるんで、せめてそのだらしない格好どうにかしておいてくださいね」
嫌味まじりにいうけど、これくらいはバチあたんないでしょ?
「野菜入れんなよ」
「何言ってるんすか、野菜増しましに決まってんでしょ」
嫌がらせでもしないと、気がすまねぇっつーの。
監督生ちゃんも、
両片思い拗らせてねぇで、レオナさんに堕ちればいいのに。
オレの認めたオーサマに間違いはないんだから。
オレの目に狂いはないんだから。
確かにグータラだし苦労はするかもしんねぇけど、
こんな不器用に縛り付けるあの人よりもマシでしょ。
使い慣れた寮の簡易キッチンで、
肉に、ジェイドくんに分けてもらったキノコと値引きされてた野菜、ジャミルくんからもらった香辛料をくわえて炒める。
肉はアズールくんにもらった。モストロで仕入れすぎたものを安価で譲ってもらったのだ。
オレが交渉して、
オレが自分で調達した食材。
と、言っても資金の出どころはレオナさんだけど。
混ざり合った食材を見ながら、世の中はそううまくは行かないもんだと思った。